ファクタリングで売掛金を払えない! 踏み倒しできない支払いについて

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ファクタリングを利用して資金繰りを改善しても、いざ支払い期日が来ると売掛金をファクタリング会社に支払えない「踏み倒し」のリスクに悩む経営者は少なくありません。資金繰りが厳しい中で、「一時的に他の支払いに充てたい」と考えるのは当然の心理かもしれません。

しかし踏み倒しは信用問題だけでなく、法的責任にまで発展する恐れがあります。本記事では踏み倒しが生じる要因や影響、対処法を解説します。キャッシュフローの改善策を知ることで、持続可能な資金調達を実現しましょう。

目次

ファクタリングの踏み倒しリスクの要因

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ファクタリングは企業の資金繰りを改善するための有効な手段ですが、2社間ファクタリングでは踏み倒しリスクが存在します。踏み倒しとは、売掛先から入金された売掛金をファクタリング会社に支払わない行為を指します。

このリスクは単なる契約違反にとどまらず、信用問題や法的責任にまで発展する可能性があるため注意が必要です。ここでは、ファクタリングの踏み倒しが生じる主な要因を詳しく見ていきましょう。

売掛金支払いの遅延が生じている

2社間ファクタリングでは、売掛先からの入金が遅延すると、ファクタリング会社への支払いも遅れてしまいます。売掛先の経営状況の悪化や支払い習慣の問題などにより、予定通りに売掛金が入金されないケースは少なくありません。

このような状況では、利用企業は支払期日までにファクタリング会社へ送金できなくなるリスクが高まります。こうした遅延が発生した場合、まずファクタリング会社に対して売掛先からの入金が滞っている事実を正直に伝え、同時に売掛先に対して支払いを促す働きかけが必要です。

ただし、入金催促には慎重さも求められます。支払い遅延が続くと、ファクタリング会社から売掛先に債権譲渡の通知が送付される可能性があるからです。これにより取引先との関係悪化を招くリスクも考慮しなければなりません。支払いの遅延は、一時的な資金不足を解消するためのファクタリング利用が、逆に信用問題へと発展する要因になりうるのです。

売掛金の流用が行われている

踏み倒しが生じる最も一般的な要因は、回収した売掛金を他の用途に流用してしまうケースです。ファクタリングを利用する企業は多くの場合、資金繰りに課題を抱えており、仕入費用や従業員給与などさまざまな支払いに追われている状況にあります。

このような状況下では、一時的な資金不足を補うために、本来ファクタリング会社に支払うべき売掛金を他の緊急性の高い支払いに充てることがあります。いけないと認識しつつも、その場しのぎで流用してしまうケースが珍しくないのが実情です。

一度流用したとしても期日までに支払えれば問題はありませんが、事業を継続する限り何らかの支払い義務は常に発生します。こうした対応を続けていると、いずれ資金が回らなくなり、踏み倒しへとつながる悪循環に陥ります。売掛金の流用は一時的な解決策のように見えて、じつは長期的な経営リスクを高める要因となるのです。

ファクタリング手数料が高額である

ファクタリングは売掛債権を早期に現金化できるメリットがある一方、手数料が発生します。売却した売掛債権の金額を、満額受け取れるわけではありません。実際に手にできるのは、売掛債権の金額から手数料や諸費用を差し引いた残額のみです。

通常の2社間ファクタリングでは、手数料が比較的高く設定されることが多く、10%から20%程度が相場となっています。この高額な手数料が資金繰り改善の障壁となるケースがあります。返済額と入金額の差が大きすぎると、資金繰りが改善せず、結果として売掛先から回収した売掛金をファクタリング会社に引き渡せない状況に陥ることがあるのです。

とくに事業資金が逼迫している企業では、高額な手数料によって実質的な資金調達効果が薄れ、ファクタリングを利用したにもかかわらず財務状況が好転しないという矛盾が生じます。このため、ファクタリング会社選びの際は手数料率を十分に比較検討し、自社の返済能力を考慮した選択をすることが重要です。

ファクタリングで踏み倒しを行った場合の影響

手錠

ファクタリングの踏み倒しは、一時的な資金難を乗り切るための手段と考える方もいるかもしれませんが、実際には深刻な影響を及ぼす行為です。ファクタリング会社との契約に基づく義務を果たさないことは、単なる契約違反を超えて、ビジネスの信頼性や法的な問題に発展します。踏み倒しがもたらす具体的な影響について詳しく見ていきましょう。

売掛先に債権譲渡が通知される

2社間ファクタリングを利用するメリットの一つは、売掛先にファクタリング利用の事実を知られずに売掛債権の現金化が図れる点です。しかし、ファクタリング会社に対する踏み倒しが発生すると、この秘匿性は失われてしまいます。

ファクタリング会社は未回収のリスクを回避するため、売掛先に対して債権譲渡通知を送付する措置を取ることがあります。この通知により、売掛先はファクタリングの利用事実を把握することになり、利用者の財務状況に疑問を持つ可能性が高まります。

通知を受けた売掛先が「資金繰りに窮しているのではないか」「回収した売掛金を流用している可能性があるのでは」といった懸念を抱くと、今後の取引関係に悪影響が及ぶことは避けられません。場合によっては取引解消という厳しい決断を下されるリスクもあるでしょう。

実務では、いきなり債権譲渡通知を送付するのではなく、まず督促の意味で通知を示唆するケースも少なくありません。しかし、この段階に至ること自体、ビジネスの信頼関係において決して好ましい状況とはいえません。売掛先への債権譲渡通知は、ファクタリング利用者に対して支払期日における確実な債務履行を促すための、強力な心理的圧力として機能するのです。

刑事罰の対象となる可能性もある

ファクタリングの踏み倒しは、民事上の債務不履行による損害賠償責任を負うだけでなく、場合によっては刑事責任に問われるリスクも存在します。これはファクタリングの法的構造に由来しています。

ファクタリング契約では、債権をファクタリング会社に譲渡するだけでなく、譲渡した債権の回収代行を利用企業に委託する契約も同時に締結するのが一般的です。この場合、利用企業が回収した売掛金を他に流用するなどして返済できなくなると、横領罪に問われる恐れがあります。

横領罪は、委託契約に基づいてファクタリング会社から預かっているお金を「自分のもの」として扱ったとみなされるために成立します。初犯の場合は5年以下の懲役刑が科される「単純横領罪」となり、踏み倒し行為に業務性があると認められれば10年以下の「業務上横領罪」が適用される可能性があります。

さらに、踏み倒しが欺罔行為に基づくものであれば「詐欺罪」も成立します。二重譲渡や架空債権の売却がこれに当たります。詐欺罪の罰則も業務上横領罪と同じく10年以下の懲役刑です。

一方、ファクタリング会社の中には、親族にまで連絡したり、悪質な取り立てを行ったりする業者も存在します。こうした事態を解決するためには、ファクタリングの実務やトラブル対応に精通した弁護士に相談する必要が生じるかもしれません。

いずれにせよ、踏み倒しは短期的な資金問題を解決するかに見えて、長期的には事業継続に関わる深刻な問題を引き起こす可能性があります。財産の差し押さえによる事業への影響だけでなく、経営者個人の信用や自由までも脅かす行為だということを認識すべきでしょう。

支払いの先延ばしや分割は可能か?

マルバツを持つ女性

ファクタリングを利用したものの、期日までに支払いが難しくなる状況は少なくありません。予期せぬ事態が発生したり、売掛先からの入金が遅れたりするなど、さまざまな理由で支払い計画が狂うことがあるでしょう。

このような場合、支払いの先延ばしや分割払いの可能性について検討することは自然な発想です。ただし、ファクタリングの契約形態や法的位置づけを理解した上で、対応を考える必要があります。

支払いの先延ばしは可能か

期日までに支払うのが難しい状況になったとき、少し猶予してもらえれば何とか工面できるというケースもあるでしょう。このような場合、支払いの先延ばしは基本的には可能ですが、いくつかの条件があります。

まず、先延ばしの期間は長くても1か月程度が一般的です。また、ファクタリング会社の承諾が必須となります。先延ばしを申し出る際は、事情を包み隠さず説明するとともに、延期してもらえれば確実に支払える見通しがあることを、誠意を持って伝えることが重要です。もちろん、支払い可能となる根拠も提示する必要があります。

ただし、この際に注意すべき点もあります。悪徳業者の中には、先延ばしを認めた後に法外な遅延利息を請求してくるケースも少なくありません。短期間の延長であっても、書面で条件を確認することが望ましいでしょう。また、長期の先延ばしに簡単に応じてくれる業者は、安易に信用しない方が無難です。そのような対応は通常のファクタリング会社では考えにくく、何らかの意図がある可能性を疑うべきです。

支払いの先延ばしは一時的な解決策にはなりますが、根本的な資金繰りの問題を解決するものではありません。延期を申し出る際には、その間に資金調達の方法を確立するなど、確実に支払いができる体制を整えることが大切です。

ファクタリングは法的には売買契約に基づく指名債権の譲渡であり、融資とは根本的に異なります。この性質上、債務の履行は期日での一括払いが原則となっており、分割払いは基本的に認められません。

分割払いを認めると、未払い分の売掛金に対して金利が生じることになり、実質的に貸付とみなされる恐れがあります。ファクタリング会社が貸金業登録を済ませていれば問題ありませんが、実際には未登録でファクタリング業を営む会社も多く存在します。これは、金銭の貸し借りを伴わないファクタリング業務には、厳格な貸金業登録が必須とされていないためです。

貸金業法に抵触するリスクを負ってまで分割払いに応じるファクタリング会社はほとんどないと考えるべきでしょう。分割払いの提案は法的なグレーゾーンに入る可能性があるため、真っ当なファクタリング会社であれば、そのような提案には応じないはずです。

逆に、ファクタリング会社の方から分割返済を持ちかけてくる場合は要注意です。これは悪徳業者である危険性を示すサインかもしれません。迂闊にこうした提案に乗ると、偽装ファクタリングの一種である「ジャンプ」の罠に陥る恐れがあります。

ジャンプとは、利息だけを支払って元金の返済期限を先送りできるシステムで、悪質な貸金業者がよく用いる手法です。ジャンプを繰り返すことで手数料が増額され、最終的には元金を返済できない状況に追い込まれかねません。

したがって、財務状況が厳しくても、回収した売掛金は速やかにファクタリング会社に支払うことが基本です。もし支払いが難しい状況になりそうなら、早めにファクタリング会社と相談し、適切な対応を協議することが重要です。

ファクタリングで踏み倒しを防ぐためのコツ

TIPSと書かれた本の表紙

ファクタリングは、適切に活用すれば資金繰りを大きく改善できる便利な資金調達手段です。しかし、目先の資金を得ることばかりに意識が向き、根本的な問題を解決しないまま利用を重ねると、やがて支払いが困難になり「踏み倒し」へとつながるおそれがあります。

ここでは、ファクタリングを健全に活用し続けるために、利用者が実践すべき3つのポイントを紹介します。

キャッシュフローを改善する

ファクタリングによって一時的に資金を調達できても、その後のキャッシュフローが改善されなければ、再び支払困難に陥る可能性があります。まずは支出を抑えるために、取引先との支払条件を見直し、締め日や支払期日の延長交渉を検討しましょう。

併せて、売掛金の早期回収や入金漏れの催促なども積極的に行うべきです。さらに、過剰在庫や遊休資産の売却を通じて現金を増やす工夫も有効。日々の資金繰りを見える化し、先を見据えた資金管理を徹底することが、踏み倒しを防ぐ最大の鍵となります。

手数料の低いファクタリング会社に切り替える

ファクタリングの利用が資金繰りを悪化させる要因の一つに、高額な手数料の存在があります。とくに2社間ファクタリングでは手数料が割高に設定されがちで、売掛金の回収額と実際に手元に残る資金のギャップが問題になりやすいです。

このような状況を改善するには、複数社から見積もりを取り、より良心的な手数料でサービスを提供している会社に切り替えるのが効果的です。ただし、極端に安価な手数料を提示する業者には注意が必要で、契約前に諸費用の内訳を丁寧に確認することが重要です。

専門の弁護士に相談する

ファクタリング会社への支払いが難しくなった場合、自力で対応を試みるのは限界があります。とくに法的なリスクが関わる事態では、ファクタリングに詳しい弁護士に早めに相談することが有効です。

専門家に依頼することで、支払い条件の交渉や督促の停止、さらには法的トラブルの回避など、さまざまな対策が講じられます。過払い手数料の返還や、分割返済の可能性を探る際にも、法的な根拠をもとに対応できるのは大きなメリットです。対応が遅れるほど選択肢は減るため、早期の相談が肝心です。

まとめ

ファクタリングは資金調達の有効な手段ですが、踏み倒しリスクを正しく理解し適切に対応することが重要です。売掛金の遅延や流用、高額な手数料などが踏み倒しの原因となり、信用喪失や刑事罰という深刻な結果を招く可能性があります。

支払いの先延ばしは一定条件下で可能ですが、分割払いは基本的に認められていません。踏み倒しを防ぐには、キャッシュフローの改善や手数料の低いファクタリング会社の選択、必要に応じた専門家への相談が効果的です。健全な資金循環を確立し、適切なファクタリング利用を心がけることで、持続可能なビジネス運営が実現できるでしょう。

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