競馬や競輪、宝くじ、パチンコなど、日本には様々な種類のギャンブルが存在します。これらを楽しむためには、それぞれ法律で定められた年齢制限が設けられていることをご存知でしょうか。特に2022年4月から民法上の成年年齢が20歳から18歳に引き下げられたことで、「18歳になったらできるギャンブルはあるの?」と疑問に思う方も増えたかもしれません。 しかし、結論から言うと、成年になったからといって全てのギャンブルが解禁されるわけではありません。ギャンブルの種類ごとに根拠となる法律が異なり、参加できる年齢も様々です。この記事では、各ギャンブルが何歳から楽しめるのか、その根拠となる法律や背景、そして成年年齢引き下げによる影響について、詳しく解説していきます。
ギャンブルの年齢制限は何歳から始まるのか?

競馬、競輪、競艇、オートレースといった国や地方自治体が運営する公営ギャンブルは、多くのファンを持つ人気のレジャーです。しかし、これらの投票券(馬券、車券など)の購入には、青少年保護の観点から法律で厳格な年齢制限が設けられています。
公営ギャンブルは20歳以上で、学生も参加可能!
日本の公営ギャンブル(公営競技)は、競馬法、自転車競技法、モーターボート競走法、小型自動車競走法といった個別の法律に基づいて運営されています。これらの法律では、いずれも「未成年者」の投票券購入や譲り受けを禁止する旨が定められています。ここで言う「未成年者」とは、かつては民法上の定義と同じく20歳未満の者を指していました。そのため、長らく公営ギャンブルは20歳から楽しむものとして定着してきました。
なお、これらの法律には学生の購入を禁止する規定はないため、20歳以上であれば大学生や専門学校生であっても投票券を購入し、ギャンブルに参加することは法律上問題ありません。
公営ギャンブルに関する法律の改正
2022年4月1日に民法が改正され、成年年齢が20歳から18歳へと引き下げられました。これにより、18歳、19歳の方も法律上は「成人」として扱われることになりました。この変更に伴い、様々な契約が親の同意なしにできるようになった一方で、飲酒や喫煙と同様に、健康被害やギャンブル依存症への懸念、そして青少年保護の観点から、公営ギャンブルの年齢制限についても慎重な議論が行われました。
その結果、各公営競技の根拠法も改正され、年齢制限に関するルールが維持されることになったのです。
成年年齢の引き下げにより、18歳はまだ不可、20歳から
民法改正を受けて、競馬法などの各公営競技の法律も改正されました。しかし、これらは年齢を引き下げるための改正ではありませんでした。附則などによって「当分の間、20歳未満の者の投票券購入を禁止する」といった趣旨の規定が設けられたのです。つまり、法律上の文言は「未成年者」から「20歳未満の者」へと実質的に読み替えられることになりました。この措置により、民法上は18歳で成人となりますが、公営ギャンブルの投票券購入は、これまで通り20歳になるまで認められないというルールが維持されています。
18歳や19歳の方は、成人であっても公営ギャンブルに参加することはできませんので、注意が必要です。
宝くじは年齢制限なしで購入可能!

お祭りや年末の風物詩としても親しまれている宝くじですが、その購入に年齢制限はあるのでしょうか。実は、他のギャンブルとは少し異なるルールが適用されています。
宝くじの販売や当せん金の支払いなどを定めている「当せん金付証票法」には、競馬法や競輪法のように、購入者の年齢を明確に制限する規定が存在しません。 したがって、法律上は、何歳からでも宝くじを購入することが可能です。
しかし、これはあくまで法律上の解釈です。実際には、多くの宝くじ売り場では、青少年保護育成条例の趣旨などを踏まえ、未成年者への販売を自主的に控えているケースが見られます。また、もし未成年者が高額当せんした場合、当せん金を受け取る際には親権者の同意が必要となるのが一般的です。法律で禁止されてはいないものの、射幸心を煽るギャンブルの一種であることに変わりはないため、社会通念上、未成年者の購入は推奨されていないのが実情です。
18歳から参加可能なギャンブル

民法上の成年年齢と同じ18歳から参加できるギャンブルもあります。ただし、これには「高校生は除く」という重要なルールが付随していることがほとんどです。
パチンコ・パチスロは18歳以上で、高校生は不可
パチンコ店やパチスロ店は、「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(風営法)」に基づいて運営されています。この法律の第二十二条第五号では、ぱちんこ屋などに対して「十八歳未満の者をその営業所に立ち入らせること」を禁止しています。したがって、パチンコ・パチスロは18歳になれば楽しむことができます。 しかし、注意が必要なのは高校生の扱いです。風営法には高校生に関する直接的な記述はありませんが、多くの都道府県では「青少年保護育成条例」などによって、18歳に達していても高校に在学中の生徒がパチンコ店などへ立ち入ることを禁止しています。そのため、たとえ誕生日を迎えて18歳になっていても、高校を卒業するまではパチンコ店に入ることはできません。
19歳から楽しめるギャンブル

18歳では参加できず、20歳から参加できる公営ギャンブルがある中で、19歳からという珍しい年齢制限が設けられているギャンブルが存在します。それが、サッカーやバスケットボールの結果を予想するスポーツくじです。
スポーツくじの年齢制限は何歳から?
サッカーくじの「toto」や「BIG」に代表されるスポーツくじは、「スポーツ振興投票の実施等に関する法律」という法律に基づいて運営されています。この法律の第十条では、「十九歳未満の者」に対して、スポーツ振興投票券の購入や譲り受けを禁止しています。つまり、スポーツくじは19歳から購入することができます。
この「19歳」という年齢設定は、他のギャンブルと比較しても非常にユニークです。公営競技が20歳以上、パチンコが18歳以上(高校生を除く)であるのに対し、スポーツくじはその中間に位置づけられています。
学生が購入できないように規定された
スポーツくじの年齢制限が19歳未満と定められた背景には、制度設計時の議論が関係しています。当初は、ギャンブル依存症への懸念などから、大学生なども含めた「学生」の購入を禁止する案も検討されていました。しかし、最終的には、特定の身分(学生)で制限をかけるのではなく、明確な年齢で区切る方が公平であるという判断から、「19歳未満」という年齢制限が採用されることになりました。
したがって、現在では19歳以上であれば、大学生や専門学校生であってもスポーツくじを購入することが可能です。20歳を待たずに楽しめる数少ない公的なくじの一つと言えるでしょう。
20歳から挑戦できるギャンブル

日本の多くのギャンブルは、20歳という年齢が大きな節目となります。民法上の成年年齢が18歳に引き下げられた後も、青少年保護の観点から、これらのギャンブルの年齢制限は20歳のまま維持されています。
競馬の年齢制限は何歳から?
日本中央競馬会(JRA)や地方自治体が主催する競馬は、「競馬法」という法律に基づいて運営されています。この法律の第二十八条により、20歳未満の者は勝馬投票券(馬券)を購入したり、譲り受けたりすることが禁止されています。
したがって、競馬に参加できるのは満20歳からとなります。18歳や19歳の成人であっても、馬券を購入することはできません。これは、ギャンブル依存症のリスクや、青少年の健全な育成を保護するという目的から、民法改正後も年齢制限が維持されているためです。
競輪の年齢制限は何歳から?
競輪は、「自転車競技法」という法律に基づき、地方自治体が主催するプロスポーツであり、公営競技の一つです。この法律の第九条で、20歳未満の者は車券を購入したり、譲り受けたりすることが禁止されています。そのため、競馬と同様に、競輪も満20歳から参加することができます。
たとえ民法上の成人であっても、18歳や19歳の方は車券を購入することはできません。これは、競輪が持つ射幸性や、若年層のギャンブル依存症への配慮から、従来の年齢制限が引き続き適用されている形となります。
競艇の年齢制限は何歳から?
競艇(ボートレース)は、「モーターボート競走法」に基づいて地方自治体が主催する公営競技です。この法律の第十一条により、20歳未満の者は舟券(勝舟投票券)を購入したり、譲り受けたりすることが禁じられています。したがって、他の公営競技と同じく、競艇も満20歳から楽しむことができます。
18歳で成人となっても、競艇に参加することは法律で認められていません。公営競技全体として、青少年の保護を目的とした足並みのそろった規制が敷かれていることがわかります。
オートレースの年齢制限は何歳から?
オートレースは、「小型自動車競走法」に基づき地方自治体が主催する、バイクを用いた公営競技です。この法律の第十二条で、20歳未満の者は勝車投票券を購入したり、譲り受けたりすることができません。これも他の公営競技と同様の規制であり、オートレースに参加できるのは満20歳になってからです。
民法改正後も、公営競技の年齢制限は一貫して20歳以上と定められており、18歳、19歳の新成人には解禁されていない点を、しっかりと理解しておく必要があります。
カジノ(大阪IR)が開設された場合、20歳から利用可能!
日本国内での設置が計画されているカジノを含む統合型リゾート(IR)についても、年齢制限は明確に定められています。「特定複合観光施設区域整備法(IR整備法)」の第六十八条により、20歳未満の者は、カジノ施設へ入場することが禁止されています。
これは、国際的な基準や、ギャンブル依存症対策、青少年保護といった観点を総合的に考慮した結果です。将来、大阪などにIRが開設された場合でも、入場・利用できるのは満20歳以上となります。公営競技と同様に、18歳、19歳の成人の方は利用できないことに注意が必要です。
まとめ
各ギャンブルに参加できる年齢は、その根拠となる法律によって様々です。宝くじのように法律上の明確な年齢制限がないものから、風営法に基づくパチンコ・パチスロ(18歳以上、高校生不可)、スポーツ振興投票法に基づくスポーツくじ(19歳以上)、そして競馬法や競輪法などに基づく公営競技(20歳以上)まで、それぞれに異なるルールが定められています。
特に重要なのは、2022年の民法改正で成年年齢が18歳に引き下げられた後も、公営競技や計画中のカジノの年齢制限は20歳のまま維持されているという点です。これは、ギャンブル依存症対策や青少年保護の観点からの措置です。 ギャンブルは、あくまでも個人の責任において、ルールを守り、無理のない範囲で楽しむ健全な娯楽です。それぞれの年齢制限を正しく理解し、法律を遵守して、健全なギャンブルとの付き合い方を心がけましょう。