ファクタリング後、売掛金の使い込みは横領罪になる?

ファクタリングで資金調達後、売掛金を他の支払いに使うとどうなるの?そんな経験や不安を抱えていませんか?実はその行為、場合によっては横領罪に問われる可能性があります。

本記事では、ファクタリング後の売掛金使用に関する法的リスクと実際の判例、回避策までをわかりやすく解説。読み終える頃には、適切な対応策とトラブル回避のためのポイントが明確になります。リスクを未然に防ぎ、安心して事業を継続したい方は必見です。

目次

ファクタリング後の売掛金問題:横領罪の可能性とは

ファクタリングと書かれた検索窓

ファクタリングを利用した後、売掛金を使い込んでしまった場合、それは重大な法的問題に発展する可能性があります。とくに二社間ファクタリングでは、売掛金がいったん利用者の口座に振り込まれるため、資金難に陥っていると、うっかりそのまま使用してしまうケースも少なくありません。

しかし、その行為が「横領罪」にあたる可能性があることを理解しておく必要があります。ここでは、横領罪の定義と、実際にどのようなリスクがあるのかを詳しく解説します。

横領罪の定義とは

横領罪は刑法第252条に規定されており、「自己の占有する他人の物を不法に領得した場合」に適用されます。ファクタリング契約を結んだ時点で、売掛債権はすでにファクタリング会社の所有物であり、たとえ利用者の口座に入金されたとしても、その金銭の所有権はファクタリング会社にあります。

したがって、これを任意に使用した場合には、法律上「業務上横領罪」に該当するおそれがあります。業務上横領罪の場合、罰金刑の選択肢はなく、懲役10年以下という重い刑罰が科されるのが特徴です。さらに、情状が悪質と判断されれば執行猶予が付かないこともあり得ます。

刑事告訴を受けるリスク:逮捕される可能性がある

売掛金の未入金が発覚し、連絡も取れないような状況が続いた場合、ファクタリング会社が刑事告訴に踏み切る可能性があります。刑事告訴とは、「相手に刑事責任を問いたい」として被害者が捜査機関に申し立てる行為です。告訴が受理されれば、警察や検察が捜査を開始し、状況に応じて逮捕も検討されます。

逮捕状が発布される可能性

捜査機関は、被告が証拠を隠したり逃亡したりする可能性があると判断した場合、裁判所に逮捕状を請求し、発布されることがあります。実際の事例では、売掛金の使い込みにより告訴された経営者が、音信不通だったことから逮捕に至ったケースも報告されています。

懲役刑を言い渡される危険性

起訴されて有罪となれば、業務上横領罪により懲役刑が科されます。たとえば、同様のケースでは数百万円の使い込みでも懲役1年半、数千万円規模の場合には懲役3年以上といった判決が出ており、執行猶予がつかないケースも少なくありません。

企業の代表者であっても、事業上の失敗が理由であれば刑の軽減が認められない場合もあるため、軽く見てはならない問題です。

ァクタリング事件を通じた横領罪の判例と事例

裁判のハンマー、天秤、六法全書イメージ

ファクタリング後に売掛金を使い込む行為は、たとえ金額が少額であっても横領罪に問われるリスクがあります。ここでは、実際に発生した事件をもとに、ファクタリングによる横領と認定された事例を紹介します。これらのケースを知ることで、自身の状況がどれほど重大な問題に発展しうるのかを具体的に理解できるでしょう。

3,000万円超の横領疑いでの逮捕

2023年11月、群馬県太田市に住む男性が、ファクタリングを通じて得た3,240万円相当の売掛金を使い込んだ疑いで逮捕されました。報道によれば、この男性はファクタリング会社と正式な契約を交わしていたにもかかわらず、売掛先からの入金を自身の目的に使用し、ファクタリング会社には支払いを行いませんでした。

被害申告を受けたファクタリング会社の告訴により事件が発覚。刑事告訴の受理後に捜査が行われ、業務上横領罪として逮捕に至ったものです。高額な被害額に加え、故意性や悪質性が強く問われた事例といえるでしょう。

30万円の横領疑いでの逮捕

少額でも見逃されないのが、横領事件の特徴です。2024年1月、館林市に住む男性が、顧客から預かった車検費用など合計30万7,000円を横領した疑いで逮捕されました。このケースはファクタリング取引ではありませんが、「少額であっても業務上の資金を使い込んだ場合、刑事責任が問われる」という典型的な例です。

ファクタリングでも、同様に売掛金が譲渡済みであるにもかかわらず使い込めば、たとえ数十万円であっても罪に問われる可能性があります。

計33回の横領疑いでの逮捕

2024年1月には、太田市で発生したもうひとつの事件が話題となりました。ある男性が、自治会の資金30万5,000円を33回にわたって使い込んだ疑いで逮捕されたのです。本件は1年に及ぶ調査の末、2023年2月の告訴状提出から2024年1月の逮捕に至っています。

少額かつ断続的な使い込みでも、立件されるまでに時間をかけて捜査が進むことを示す事例です。ファクタリングにおいても、複数回にわたる使い込みや連絡の不履行などが積み重なれば、悪質性が高いと判断され、重い処罰が科される可能性があります。

ファクタリングで横領罪になるリスク

綱渡りしているサラリーマン

ファクタリングは、売掛債権を早期に現金化できる便利な資金調達手段ですが、その仕組みを正しく理解していないと、思わぬトラブルや刑事責任に発展する恐れがあります。

とくに「使ってしまった売掛金が、すでにファクタリング会社のものだった」といったケースでは、契約違反だけでなく、業務上横領罪として処罰の対象となる可能性があります。横領罪に問われることを回避するためには、適切な対処が不可欠です。

弁護士の助言を求めるべき

売掛金の支払いが困難になったとき、最初に考えるべきは「専門家の力を借りること」です。とくに弁護士は、横領罪が成立するかどうかの判断や、刑事告訴を避けるための具体的対応について法的な視点から助言をくれます。

支払いが間に合わないまま放置すれば、状況は確実に悪化し、逮捕や起訴といった深刻な事態に陥るリスクが高まります。早めに法律事務所へ相談し、取るべき対応の選択肢を整理しておくことが、事業を守るうえでも重要です。

ファクタリング会社への連絡

支払い遅延が発生しそうな段階で、真っ先に行うべきなのが「ファクタリング会社への連絡」です。多くの事業者が、恥ずかしさや恐怖から連絡を避けがちですが、それこそが最も危険な対応です。

誠意を持って事情を説明し、いつ、どのように支払えるのかを具体的に伝えることで、ファクタリング会社側も状況を理解し、柔軟な対応を検討してくれる場合があります。何より重要なのは、逃げずに向き合う姿勢です。

分割払いは避けるべき理由

資金繰りに苦しむ中、「一括では払えないから、分割払いにしたい」と考えるのは自然なことかもしれません。しかし、ファクタリング契約はあくまで「売掛債権の売却」であり、融資ではありません。そのため、分割払いを認めると事実上「貸付け」とみなされ、法律上は貸金業に該当してしまいます。

ほとんどのファクタリング会社は貸金業の登録をしていないため、分割に応じれば業者側が法律違反となるリスクを負うことになります。結果として、断られるのが通常であり、「分割で払えばよい」と考えるのは現実的ではありません。まずは一括支払いが可能となる手段を探し、資金調達や支払い計画を再検討することが求められます。

支払い遅延によるファクタリングの追加損害

遅延

ファクタリングを利用した際、売掛金の支払いが期日までに完了しないと、横領罪といった刑事責任に発展するだけでなく、契約上のペナルティや信用失墜といった深刻な二次被害にもつながります。ここでは、支払い遅延が招く3つの追加損害とその対処法について解説します。

遅延損害金のリスクと対処法

ファクタリング契約では、売掛金の支払いが遅れると「遅延損害金」が発生します。この損害金は、未払い金額に対して年利で一定の料率(たとえば3%)を掛け、日数分を日割りで計算する仕組みです。たとえば売買代金120万円に対し、45日遅延した場合には約4,400円の損害金が加算されます。

契約書に損害金料率が明記されていない場合は、民法の法定利率が適用され、現在は年3%が基準です。支払い期日を過ぎてしまった場合には、まず契約内容を見直し、遅延損害金がいくらになるかを試算しておくことが、追加負担の予測に役立ちます。

ファクタリング会社からの取り立て対策

支払いが滞った場合、ファクタリング会社から督促の連絡が入るのが一般的です。最初は電話や書面での確認から始まりますが、放置したり、誠意のない対応をしたりすると、法的手段に進展する可能性があります。

ファクタリング取引は貸金業とは異なり、取り立てに関する法的制限が緩やかであるため、連絡を無視するのは非常に危険です。相手からの連絡には速やかに応じ、現状の資金繰り状況や今後の返済見込みを説明しましょう。万が一、威圧的な対応や暴言などがあれば、弁護士に相談することも重要です。

売掛金の管理と通知の重要性

とくに二社間ファクタリングでは、売掛先からの入金が一度自社を経由するため、売掛金の管理が極めて重要です。支払い遅延が発生すると、ファクタリング会社は最後の手段として、売掛先へ「債権譲渡通知」を送ることがあります。これにより、ファクタリングの利用が取引先に知られ、信用を損なうおそれが出てきます。

事前に契約内容を確認し、未入金時に通知が行われる条件が明記されていないかをチェックしておくと安心です。また、売掛金が入金されたらすみやかに処理し、流用せず確実にファクタリング会社へ支払う管理体制を整えることが、信頼維持につながります。

資金不足時の注意点と対処法

問題点を発見する・見つける

事業資金が不足し、ファクタリングで得た売掛金を支払えなくなると、深刻な事態に発展する可能性があります。とくにその場しのぎの対応や隠ぺいを試みると、状況はさらに悪化します。ここでは、資金難に陥ったときに取ってはならない行動と、注意すべき法的リスクを解説します。

支払いを避ける行為はリスクを伴う

「今月は苦しいから支払いを後回しにしよう」「連絡が来ても無視すれば何とかなるかもしれない」といった軽率な判断は、後の人生を左右しかねない結果を招くことがあります。ファクタリング取引における売掛金はすでにファクタリング会社の財産であり、それを使い込んだまま返済を怠れば、業務上横領罪として刑事告訴される可能性があるからです。

実際に、数十万円の使い込みでも逮捕に至った事例が存在します。支払えない場合こそ、事情を正直に説明し、今後の対応について協議する姿勢が何よりも大切です。

売掛債権の二重譲渡の問題

資金が足りず、すでに譲渡済みの売掛債権を別のファクタリング会社に再度売却する、いわゆる「二重譲渡」は、明確な契約違反であるだけでなく、詐欺罪に問われる重大な犯罪行為です。売掛債権は一度しか譲渡できないという原則があるため、他社に重ねて売却することは、所有権を偽って取引する詐欺行為に該当します。

刑事責任に加えて、複数の会社との債権トラブルを抱えることにもなり、事業の継続すら危ぶまれる結果となりかねません。どんなに資金繰りが苦しくても、安易に二重譲渡を考えるべきではありません。

まとめ

ファクタリングは便利な資金調達方法である一方、売掛金の管理を誤ると横領罪や詐欺罪といった重大なリスクに発展します。とくに二社間ファクタリングでは、売掛金が自社口座に振り込まれるため、使い込みが発生しやすく、法的責任を問われやすい構造になっています。

支払いが難しい場合には、弁護士への相談やファクタリング会社への早期連絡など、誠実な対応が不可欠です。一時の判断で事業や人生を失わないためにも、法的知識と冷静な判断をもって対応することが重要です。

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