ファクタリングは「やばい」？資金調達のリスクと安全な利用方法を解説

2025年1月31日

資金繰りに困った経営者から「ファクタリングはやばいのでは？」という声をよく耳にします。この不安は、一部の悪質な業者による被害が報道されていることが背景にあります。しかし、ファクタリングは経済産業省も推奨する正当な資金調達方法で、売掛金を早期に現金化できる仕組みは、企業の成長を支える重要な選択肢となっています。

安全な取引のためには、優良な会社を見極め、適切な利用方法を理解することが欠かせません。本記事では、取引相手の選び方から具体的な活用戦略、専門家との連携方法まで、実践的な内容をお伝えします。正しい知識を身につけることで、効果的な資金調達を実現しましょう。

ファクタリングとは何か？

ファクタリングとは、支払期日より前に売掛金を現金化する資金調達の方法のこと。企業間の取引では、商品やサービスの代金を後払いにするケースが多く見られます。その際に発生する売掛金を、専門の会社が買い取って現金化するのがファクタリングの仕組みです。

事業を続けていく中で、資金繰りに困ったときの選択肢として広がっていますが、最近では「ファクタリングはやばい」という声も聞かれます。これは一部の悪質な業者による影響であり、正しく利用すれば安全に資金調達できます。実際、多くの中小企業が資金繰りの改善や事業拡大の資金として活用しており、経済産業省も有効な資金調達手段として推奨しています。
（参考：経済産業省中小企業庁 – 売掛債権の利用促進について）

ファクタリング取引の全体像と流れ

ファクタリングの手順はシンプルです。

売掛金を持っている会社がファクタリング会社に相談
買取金額や手数料について話し合い、条件が決まれば契約を結ぶ
数日以内に現金が振り込まれ、支払期日が来たら売掛金は直接ファクタリング会社に支払う

取引先に知られずに資金調達ができる「2社間取引」と、取引先にも知らせる「3社間取引」の2種類があります。

2社間取引とは

2社間ファクタリングは、事業者とファクタリング会社のみで完結する資金調達方法です。この仕組みでは、事業者が保有する売掛金をファクタリング会社に譲渡し、手数料を差し引いた金額を即時に受け取ることができます。その後、事業者自身が取引先から売掛金を回収し、回収した資金をファクタリング会社へ支払います。

このファクタリング方式の大きな特徴は、取引先に知られることなく資金調達が可能な点です。また、契約から資金化までの手続きがスピーディーで簡素化されているため、急な資金需要にも対応できます。ただし、売掛金の回収業務は従来通り事業者が行う必要があります。

3社間取引とは

3社間ファクタリングは、事業者、ファクタリング会社、そして取引先の3者が関与する資金調達の仕組みです。この方式では、事業者が売掛金をファクタリング会社に譲渡した後、ファクタリング会社が取引先から直接代金を回収します。

この手法の主なメリットは2つあります。1つは、事業者が売掛金の回収業務から解放されることです。もう1つは、審査が取引先の支払い能力に基づいて行われるため、事業者自身の財務状況が芳しくない場合でも利用できる可能性が高いことです。

一方で、3者間での合意形成が必要となるため、資金調達までの手続きに時間を要します。また、ファクタリング会社が取引先から直接回収を行う性質上、取引先に対してファクタリングの利用を開示する必要があります。

「2社間取引」と「3社間取引」の比較

それぞれの比較は下記のとおりです。

比較項目	2社間取引	3社間取引
手数料	10～20%	1～9%
売掛先への通知	不要	必要
資金調達の早さ	早い	承諾取得のため時間がかかる
支払いの流れ	売掛先→利用者→ファクタリング会社	売掛先→ファクタリング会社
取引の秘匿性	高い	低い
信用調査	厳格	比較的緩やか
買取可能額	比較的少額	高額対応可能

関連記事：3社間ファクタリングとは？流れや手数料、メリット・デメリットを解説

売掛金買取と資金調達の関係性

事業を営む中で急な支払いが必要になることは珍しくありません。すでに確定している売掛金があれば、ファクタリングで素早く資金を確保することができます。

売掛金の買取はあくまで債権の売買という位置づけのため、借入とは異なり返済の必要もありません。もし取引先が倒産してしまっても、その損失はファクタリング会社が負うため、資金調達した側が追加で支払う心配もありません。

取引の仕組みは民法で認められた債権譲渡であり、法的にも問題のない取引です。銀行融資が難しい状況でも、売掛先の信用力があれば利用できるため、中小企業の資金調達手段として重要な役割を果たしています。

ただし、手数料の設定が相場から大きくかけ離れている業者や、分割払いを持ちかける業者には注意が必要です。

一般的な融資との違い

比較項目	一般的な融資	ファクタリング
取引の性質	金銭の貸し借り	売掛債権の売買
費用	金利（年1～15%）	手数料（取引額の1～20%）
返済義務	あり（分割返済）	なし（債権の売却）
売掛先が倒産した場合	関係なし（返済義務継続）	買戻し義務なし
資金調達の期間	申込から2週間程度	最短即日
審査のポイント	自社の業績・財務内容	売掛先の支払能力
必要書類	決算書、事業計画書など多数	請求書と通帳のコピーが中心
利用限度額	金融機関が設定した上限まで	売掛債権の範囲内で無制限
担保・保証人	原則必要	不要

このように、融資とファクタリングには大きな違いがあります。自社の状況や目的に合った方法を選択することが大切です。

ファクタリングが「やばい」と言われる理由とは？

ファクタリングは資金調達の一つとして注目を集めているものの、一部の悪質な業者による被害が社会問題化しています。金融庁からは給与ファクタリングに関する注意喚起も出されており、慎重な対応が呼びかけられています。
（参考：ファクタリングの利用に関する注意喚起：金融庁）

法律に基づく正当な資金調達手段であり、経済産業省も中小企業支援の一環として推奨していることから、業界への規制が緩やかで参入障壁が低く、さまざまな事業者が存在するのが現状です。

利用を検討する企業は、安全に取引できる業者かどうかを見極める必要があります。法制度の整備が追いついていない面はありますが、正しい知識を持って利用すれば、効果的な資金調達の手段となります。

ファクタリング業者が免許や貸金業登録を持たない理由とは？

多くのファクタリング業者は免許や貸金業登録を持っていません。これは、単純に必要がないためです。貸金業では、借り手の返済能力を審査したり、金利の上限を守ったりするため、厳格な規制が必要とされます。しかし、ファクタリングは売掛金の売買取引であり、利用者からの返済を前提としていません。支払いの責任は、売掛金の支払元である取引先が負うため、貸金業のような規制は必要ないと判断されています。

そのため貸金業登録の対象外となっていますが、この仕組みを悪用し、貸金業の規制を逃れようとする業者も現れているのが実情です。取引内容によっては貸金業法違反に問われるケースもあるため、実質的な貸金業を行っていないかをチェックすることが大切です。

ファクタリング業界に法律規制がない背景とは？

企業間取引における債権売買は長年の商慣習として定着していました。事業者同士の取引は対等な立場で行われることが前提であり、消費者保護のような厳格な規制は想定されていませんでした。金銭の貸し借りを規制する貸金業法や、利息の上限を定める利息制限法なども適用外でした。

しかし近年では業界の拡大に伴い、売掛債権の買取という形を取りながら、実質的には貸金業を営むような事例も見られるようになり、新たな規制の必要性が議論されています。しかし現時点では具体的な法整備には至っていません。

利用頻度によっては資金が減る？

売掛債権の売却には一定の手数料が発生し、この負担が企業の収益を圧迫する可能性があります。2社間取引では売掛金額の10～20%、3社間取引でも1～9%程度の手数料が一般的です。このサービスを頻繁に利用すると、その分だけ実質的な売上が目減りしていく計算になります。

中小企業の場合、利益率が10%前後のケースも多く、手数料負担は経営に大きな影響を与えかねません。事業の成長期などの一時的な資金需要には有効な手段ですが、恒常的な資金繰り改善策としては検討が必要です。

悪徳業者がファクタリング会社を装う危険性とは？

法規制が緩やかな環境を悪用し、詐欺的な取引を持ちかける業者が存在します。正規の取引では、売掛先が倒産しても買戻し義務は生じませんが、悪質な業者は契約時に償還請求権を盛り込むことがあります。また、分割払いを認めたり、契約内容を曖昧にしたりする手口も見られ、気付いたときには予想以上の支払いを求められるケースが後を絶ちません。

こうした被害に遭わないためには、業者の実態をしっかりと確認し、不自然な条件には警戒する目を持つことが不可欠です。取引実績や会社の沿革、オフィスの実在性など、複数の観点から信頼性をしっかりと確認しましょう。急いでいるときこそ慎重な判断が必要です。

関連記事：ファクタリング悪徳業者とは？やばい手口・詐欺から身を守る方法

適切なファクタリング会社の特徴

安全な資金調達を実現するためには、取引先となる会社選びが重要です。繰り返しになりますが、中小企業からの需要が高まる一方で悪質な業者も増えており、慎重な選定が求められています。

じつは優良な会社には共通する特徴があり、それを知ることで安全な取引が可能になります。基本的なポイントを押さえることで、リスクを避けながら効果的な資金調達が実現できるでしょう。

会社選びの基準を理解し実際の取引の流れをつかむことで、安心して資金繰りの改善に取り組むことができます。

信頼できる会社の見分け方

正規の事業者を見分ける大きなポイントは、会社の透明性です。

優良なファクタリング会社には、以下のような特徴が見られます。

豊富な取引実績を持ち、実績件数や取引総額を公開している
過去の利用者からの評価や口コミが確認できる
運営会社の基本情報が公式サイトで確認できる
代表者名が明記されている
実在する所在地が記載されている
固定電話での問い合わせに対応している

実績のある会社では、契約時に曖昧な条件を出すことはありません。初めから明確な審査基準や手数料体系を示し、利用者の状況に応じた提案をします。取引開始前には必ず担当者との対面での打ち合わせがあり、疑問点にはしっかりと回答する姿勢も見られるでしょう。不安な点があれば、事前に所在地に実在する会社なのか確かめたり、問い合わせを行ったりすることをおすすめします。

契約内容の重要なチェックポイント

利用を決める前には、契約書の内容に、売掛金が回収できなかった場合の対応や手数料の計算方法など、取引条件が具体的に明記されているかを確認します。

とくに気をつけたいのは、分割払いの提案や追加費用の発生について触れられていないかという点です。正規の取引では、買い取った売掛金は一括で支払うのが基本で、後から新たな費用が発生することもありません。契約書には必ず「債権譲渡契約」という文言が含まれているか、「償還請求権なし」の取引であることが明記されているかを確認しましょう。また、取引先の倒産リスクを利用者に負わせるような条項が含まれている場合は、契約を見送るべきです。

不明な点は担当者に質問し、納得できる説明を受けてから契約を結ぶようにしましょう。

取引開始前にしておくべきこと

安全な取引のために、事前の準備と確認を怠らないようにしましょう。売掛金の存在を証明する請求書や、取引の実態が分かる通帳の写し、本人確認書類などが必要となります。

審査では売掛先の支払い能力が重視されるため、取引履歴や信用情報も重要な判断材料になってきます。事業の実態がしっかりしていれば、スピーディーな審査で即日の資金調達も可能です。一般的な融資と異なり、自社の業績や担保は問われませんが、売掛金の確実性は厳しくチェックされます。

取引を始める前に、手数料の相場や支払いのタイミングなど、基本的な仕組みを理解しておくことで、スムーズな資金調達が実現できます。複数の会社から見積もりを取り、条件を比較検討するのもおすすめです。

ファクタリングを安全に活用するための知識

取引を始める前に、手数料の相場感や審査基準、必要書類などの基本的な知識を身につけましょう。以下について把握しておくことで企業の成長を支える効果的な資金調達が可能になります。

法的な保護と規制について
適切な取引金額の設定方法
企業の信用力を維持する取引プラン

これらの実務に必要な具体的な知識について、順を追って見ていきましょう。

法的な保護と規制について

債権譲渡による資金調達は、民法第466条で明確に認められています。金銭の貸し借りではないため貸金業法の規制対象外ですが、違法という意味ではありません。

取引の安全性は契約によって守られ、売掛先が倒産した場合のリスクは買取会社が負担する仕組みになっています。しかし、分割払いや償還請求権の付与は、貸金業に該当する可能性がある取引のため避ける必要があります。

契約書には取引条件が明確に記載されています。優良な会社との取引であれば、法的なトラブルに巻き込まれる心配はありません。業界全体でも自主規制の取り組みが進み、取引の透明性向上や利用者保護の制度作りが進められています。

適切な取引金額の設定方法

必要以上の金額を現金化すると、手数料負担が増えて収益を圧迫する可能性があります。売掛先の支払い時期や金額を考慮し、必要最小限の範囲に留めましょう。

2社間取引と3社間取引では手数料に大きな差があるため、取引先との関係性を踏まえて選択する必要があります。複数の見積もりを取って比較検討すれば、より有利な条件での取引が可能になるでしょう。資金繰り表を作成して中長期的な収支を把握し、計画的な利用を心がけることで、手数料負担を最小限に抑えられます。

急な資金需要に備えて、一定額の売掛金を確保しておくことも検討しましょう。手数料率は取引金額や回数によって変動する場合もあるため、事前に詳しい条件を確認することも必要です。

企業の信用力を維持する取引プラン

健全な経営を続けるには、取引のタイミングや頻度にも注意を払う必要があります。ファクタリングは急な資金需要に対応できる一方で、過度な利用は手数料負担が重くなり、収益性の低下につながります。

取引先との関係を考慮して2社間か3社間を選び、信用力の維持に努めましょう。事業の成長段階に応じて利用方法や、手数料率、取引条件を見直すことも大切です。また、必要に応じて複数の会社を使い分けることも検討するとよいでしょう。

銀行融資と組み合わせることで、総合的な資金調達コストを抑えることも可能です。経営の安定性を高めるために、資金調達手段の多様化は欠かせません。

財務健全性を保つ活用戦略

資金調達を成功に導くためには、目先の資金繰りだけでなく、経営全体を見据えた戦略が必要です。

資金需要は事業の成長に伴って変化するため、柔軟な対応が求められます。財務の健全性を維持しながら事業を拡大していくには、いくつかの重要なポイントがあります。経営判断の質を上げるために、定期的な見直しも欠かせません。

具体的にどのような点に注意を払えばよいのか、順を追って見ていきましょう。

計画的な資金繰り管理

売掛金は運転資金の重要な源泉となるため、すべてを現金化するのではなく一定額を確保したうえで、緊急時の備えとして手元資金の目標水準を設定し、それを下回らないよう管理します。

資金繰り表は最低でも3か月先まで作成し、季節変動や特需なども考慮に入れましょう。そして、取引先ごとの支払い条件や回収実績を整理し、データに基づいた判断ができる体制を整えます。財務の健全性を保つため、定期的にキャッシュフローの状況を確認し、必要に応じて調達方法の見直しも行いましょう。

取引頻度の適切なコントロール

過度な利用を避けるため、売上高に対する手数料の比率を定期的にチェックし、経営に与える影響を把握します。

無計画な利用は企業の収益性を損なう可能性があるため、以下のポイントを意識しましょう。

大きな金額を一括で現金化するのではなく、必要に応じて小分けにして利用すると手数料負担を抑えられる場合もある
取引実績を積み重ねていくことで、より有利な条件での契約を期待できる
複数のファクタリング会社を使い分けることで、手数料の比較検討や緊急時の対応力を高められる

取引は、売掛先の支払い時期や金額を考慮し、最適なタイミングで行うようにしましょう。効率的に利用するには、資金需要の予測精度を上げることが欠かせません。継続的なモニタリングによって取引頻度の最適化を図りましょう。

長期的な事業成長との両立

事業の持続的な成長を実現するには、短期的な資金需要への対応と長期的な投資のバランスが重要です。

売掛金の現金化で得た資金は、将来の収益につながる用途に優先的に充てましょう。事業拡大や設備投資の機会を逃さないよう、常に一定の資金を確保しておくことをおすすめします。

そのためには、経営計画と連動した資金計画を立て、中長期的な視点で財務戦略を組み立てることが必要です。業界動向や市場環境の変化に目を配り、必要に応じて戦略の見直しを行いましょう。

定期的に財務分析を行い、成長投資と財務健全性のバランスを保つことが、事業の持続的な発展につながります。

専門家との連携による安全な取引

資金調達を始める前に、以下のような各分野の専門家に相談することで、安全で効果的な取引が実現できます。

税理士・会計士への相談ポイント
法務面での確認事項
金融の専門家によるアドバイスの活用

事前相談を通じて不安要素を解消し、それぞれの専門家の知見を活用することをおすすめします。

税理士・会計士への相談ポイント

取引開始前に税理士や会計士に相談することで財務面での不安を解消できます。

税理士や会計士は売掛金の現金化が、会計処理や税務申告に与える影響を熟知しています。手数料の損金算入方法や、キャッシュフロー計算書への反映方法など、具体的な処理方法についてのアドバイスをもらい、決算期をまたぐ取引の場合の処理方法を確認しておきましょう。資金繰り表の作成支援や、取引が財務諸表に与える影響の分析も依頼できます。

定期的な財務状況の確認を通じて、過度な利用を防ぐための適切なアドバイスも得られるでしょう。取引実績は必ず記録として残し、関連書類は適切に保管する習慣をつけましょう。

法務面での確認事項

契約書の内容確認や法的リスクの評価には、弁護士の専門知識が不可欠です。契約条項の中に不当な内容が含まれていないか、償還請求権の有無や分割払いの可否など、重要な点を確認してもらいましょう。弁護士の目を通すことで、契約書の文言一つひとつの意味を理解し、将来のトラブルを未然に防ぐための対策を講じることができます。

そのほかにも、下記について相談や助言をもらうとよいでしょう