ファクタリングと手形割引の違いとは?メリット・デメリットを比較

ファクタリングと手形割引の違いとは?メリット・デメリットを比較

資金繰りを改善したい企業経営者にとって、売掛債権を早期に現金化できるファクタリングと手形割引は有効な選択肢となります。しかし、どちらが自社に適しているか判断するには、その違いを正確に理解することが不可欠です。

本記事では、ファクタリングと手形割引の基本的な仕組みの違いから、それぞれのメリット・デメリットまで詳しく比較解説します。自社の状況に最適な資金調達方法を選択し、安定した経営基盤を築くための参考にしてください。

目次

ファクタリングと手形割引の違いとは?

企業の資金繰りを改善する方法として、ファクタリングと手形割引はどちらが良いのでしょうか?両者は売掛債権を早期に現金化できる点で共通していますが、実際の仕組みや特徴には大きな違いがあります。特に2026年に約束手形が廃止される予定であることも踏まえると、違いを把握しておくことは将来的な資金計画にも役立つでしょう。

現金化の対象が異なる

ファクタリングと手形割引の最も基本的な違いは、現金化する対象です。ファクタリングは売掛金(売掛債権)を、手形割引は約束手形(受取手形)を現金化します。

売掛金は企業間取引における商品やサービスの対価として後日受け取る代金を指し、帳簿上の債権です。一方、約束手形は有価証券であり、発行者が受取人に対して一定期日までに支払いを約束する証書です。手形は不渡りとなると銀行取引停止などの厳しい制裁を受けるため、売掛金よりも支払いに関する意識が高くなる傾向があります。

つまり、支払いを確実に回収できる可能性は手形のほうが高いといえるでしょう。

審査基準の違い

ファクタリングでは主に売掛先の信用力が重視されます。利用者自身が赤字決算や債務超過であっても、売掛先の信用力が高ければ審査に通過する可能性は高くなります。

これに対し、手形割引の場合は銀行か専門業者かで異なります。銀行で行う場合は利用者の信用力も厳しく審査されます。財務状況や過去の取引履歴なども判断材料となり、赤字企業では利用が難しいこともあります。一方、手形割引専門業者の場合は手形振出人の信用度が重視されるため、比較的審査が通りやすい傾向があります。

貸金業法の適用状況

ファクタリングと手形割引では、貸金業法の適用範囲が異なります。

ファクタリングは売掛債権の売買契約と見なされるため、貸金業法は適用されません。これにより手数料の上限規制もなく、ファクタリング会社によって手数料率が異なります。

一方、手形割引は貸金業に含まれており、貸金業法の規制を受けます。銀行で手形割引を行う場合は銀行法が、手形割引専門業者の場合は貸金業法が適用され、金利は20%が上限と定められています。

手数料の差異

ファクタリングの場合、2者間契約では売掛金額の10〜20%程度、3者間契約では1〜9%程度が一般的な手数料率です。契約形態によって料率が大きく変わるのがファクタリングの特徴といえるでしょう。

対して手形割引では、銀行を利用した場合の金利は年利1〜5%程度、手形割引専門業者では年利5〜20%程度といわれています。手形割引は日割り計算で金利が算出されるため、短期間の資金調達であれば実質的なコストを抑えられる可能性があります。

3者間ファクタリングか銀行での手形割引が比較的コストを抑えられる傾向にあるといえるでしょう。

償還請求権の有無

ファクタリングと手形割引では、債務不履行が発生した場合の責任の所在が異なります。

ファクタリングは基本的に償還請求権のないノンリコース契約が主流です。これは売掛先が倒産などで支払いができなくなった場合でも、ファクタリングを利用した企業が弁済義務を負わないことを意味します。未回収リスクはファクタリング会社が負う形になります。

一方、手形割引は償還請求権のあるリコース契約が一般的で、手形振出人が支払い不能になった場合、手形割引を利用した企業に支払い義務が発生します。つまり、債権回収の最終的なリスクは自社が負うことになります。

取引先へのリスク露呈の有無

ファクタリングと手形割引では、取引先に知られるリスクが異なります。

2者間ファクタリングでは、利用者とファクタリング会社の間だけで取引が完結するため、基本的に取引先に知られることはありません。しかし3者間ファクタリングでは、取引先の承諾が必要なため、資金調達の事実が知られてしまいます。これにより「資金繰りが苦しいのでは」という印象を与え、取引先との関係に影響を及ぼす可能性があります。

一方、手形割引は利用者と金融機関の間で完結するため、取引先に知られることはほとんどありません。

取引先との関係を考慮すると、手形割引か2者間ファクタリングを選ぶほうが無難でしょう。ただし2者間ファクタリングでも、債権譲渡登記をすると情報が公開されることがあります。

資金調達法としてのファクタリングのメリット・デメリット

ファクタリングは売掛金を早期に現金化できる資金調達方法として、多くの企業に活用されています。特に銀行融資が受けられない中小企業や個人事業主にとって、貴重な資金調達手段となっています。

しかし、その利用にあたっては、メリットだけでなくデメリットも理解しておきましょう。

ファクタリングのメリット

ファクタリングを利用する主なメリットは以下の通りです。

  • 売掛金を最短即日で現金化できるため、急な資金需要にも対応可能
  • 融資ではなく売掛債権の売買契約となるため、会社の信用情報に影響しない
  • 借入金として計上されないため、財務状態が健全に見える
  • ノンリコース契約であれば、売掛先の倒産リスクを回避できる

赤字企業や創業間もない企業でも利用できる点も、銀行融資と比較した大きなアドバンテージといえるでしょう。

ファクタリングのデメリット

ファクタリングを利用する際の主な注意点は以下の通りです。

  • 手数料が比較的高く、特に2者間ファクタリングでは売掛金額の8~18%程度、悪質業者だと30%を超える
  • 売掛金額が上限となるため、大きな資金需要には対応できない
  • 3者間ファクタリングでは取引先の承諾が必要なため、信用不安を与える可能性がある
  • 継続的な利用で手数料負担が累積し、長期的な経営を圧迫する恐れがある

ファクタリングは短期的な資金調達手段として有効ですが、コスト面を考慮し、計画的に活用しましょう。また、信頼できるファクタリング会社を選ぶことも成功の鍵となります。

資金調達方法としての手形割引のメリット・デメリット

手形割引は長い歴史を持つ資金調達方法で、約束手形を期日前に現金化する仕組みです。日本の商取引で広く使われてきましたが、2026年には約束手形は廃止が予定されています。しかし現時点では、特に約束手形による取引が多い業界において重要な資金調達手段となっています。

手形割引を活用するにあたっては、そのメリットとデメリットを理解し、自社の状況に合わせて判断することが大切です。約束手形廃止後の対応も視野に入れながら検討しましょう。

手形割引のメリット

手形割引を利用する主なメリットは以下の通りです。

  • 銀行での手形割引なら、年利1〜5%程度と比較的低金利
  • 一般的な融資より審査に通りやすいく、特に約束手形の振出人が大手企業の場合、中小企業でも審査に通りやすい
  • 銀行や専門業者との取引のため、取引先に資金調達の事実を知られない
  • 長い歴史を持つ資金調達方法として金融機関の理解が深い

特に取引先が信用力の高い大企業である場合、その信用力を活用して比較的好条件で資金調達できる点が魅力です。資金繰りの状況を取引先に悟られずに調達できるため、ビジネス関係を損なうリスクも軽減できます。

手形割引のデメリット

手形割引を利用する際の主な注意点は以下の通りです。

  • 約束手形が不渡りになった場合、支払い義務が発生する
  • 融資と見なされるため、バランスシート上では借入金として計上され、負債が増えることになる
  • 銀行で手形割引では、審査や手続きに1週間程度かかることが多い
  • 専門業者を利用する場合は即日対応可能だが、金利は高くなる傾向がある

償還請求権があることで、取引先の倒産リスクを自社が負うことになる点は大きなデメリットです。また、約束手形の廃止が予定されている中で、長期的な資金調達計画では代替手段も検討する必要があります。

まとめ

ファクタリングと手形割引は、どちらも売掛債権を早期に現金化できる資金調達方法ですが、それぞれに特徴や違いがあります。

【ファクタリング】

  • 売掛金を対象
  • 審査基準が比較的緩やか
  • 償還請求権がないケースが多い
  • 取引先に知られずに資金調達できる2者間契約がある

【手形割引】

  • 約束手形を対象
  • 比較的金利が低い
  • 弁済義務がある

2026年には約束手形が廃止される予定であり、今後はファクタリングの重要性が増すでしょう。

これらの違いを理解した上で、自社の状況や目的に合った方法を選ぶことが大切です。また、いずれの方法も一時的な資金調達手段と捉え、長期的な経営改善策も併せて検討することをおすすめします。

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