ファクタリングは売掛金を早期に現金化できる便利な資金調達方法ですが、一部の悪徳業者による被害が発生しています。資金調達を目的とした取引で損失を被らないためには、悪質な手口や詐欺的な取引手法を理解し、適切な対策を講じる必要があります。この記事では悪徳業者の特徴や見分け方、安全な取引のための具体的な対応策まで解説します。
要注意!ファクタリングのやばい手口

ファクタリング業界では、以下にあるようなさまざまな悪質な手口が報告されています。
- 不透明な契約内容と説明不足
- 過剰な手数料設定のパターン
正しい知識を身につけ、安全な取引を実現しましょう。
不透明な契約内容と説明不足
悪徳業者は契約内容をあえて複雑化し、利用者が理解しづらい状況を作り出します。契約書には「買戻請求権」や「償還請求権」といった利用者に不利な条件が小さな文字で記載されていたり、重要事項の説明が省略されたりすることがあります。
とくに問題なのは、契約書の控えを渡さないケースです。後日トラブルが発生した際に、契約内容の確認ができず、利用者が不利な立場に追い込まれる可能性があります。また、見積もり時と契約時で手数料が大きく変更されることもあります。
過剰な手数料設定のパターン
悪徳業者による過剰な手数料設定には、複数のパターンがあります。相場を大きく上回る手数料を設定したり、契約時に初期費用や事務手数料など新たな費用を追加したりすることが多く見られます。
一般的なファクタリングの手数料は、2者間で10%から20%、3者間で1%から9%程度が相場となっています。しかし悪徳業者は「初回利用特別料金」「即日振込手数料」「信用力不足による追加手数料」など、さまざまな名目をつけて費用を追加してきます。
保証料や手付金など本来ファクタリングに存在しない費用を請求するケースもあり、資金繰り改善の目的とは逆に、企業の財務状況を悪化させる要因となっています。
知っておきたいファクタリング詐欺の手法

資金調達を目的としたファクタリング取引において、以下のような詐欺的な手口は年々巧妙化しています。
- 詐欺的な取引の基本パターン
- 強引な営業活動
- 巧妙化する契約時の落とし穴
- 被害を防ぐための早期発見ポイント
悪徳業者の手口を理解し、適切な対策を取ることが重要です。
詐欺的な取引の基本パターン
ファクタリングを装って実質的な貸付を行う「偽装ファクタリング」が代表的な詐欺手法となっています。貸金業の登録がないにもかかわらず、売掛金を担保にした高金利での貸付を行います。
債権回収時には暴力的な取立てを行うこともあり、売掛先の倒産時には利用者に返済を求めるケースもあります。また、個人の給与債権を買い取る給与ファクタリングも実質的には違法な貸付となっています。
契約書の確認を怠ると、ファクタリングと思って契約したものが実は金銭消費貸借契約だったという事態も発生しています。金融庁からも給与ファクタリングについて注意喚起が行われており、利用は避けるべきです。
(参考:ファクタリングの利用に関する注意喚起:金融庁)
強引な営業活動
悪質な業者は「審査なし」「手数料固定」といった誇大な宣伝文句を使用します。電話やメールで執拗に勧誘を行い、資金繰りに困っている状況に付け込んで契約を迫ってきます。
事業所や固定電話を持たず、携帯電話のみで営業活動を行う業者も存在します。見積もりを出さない、契約を急かす、契約書の写しを渡さないなど不透明な対応も特徴です。
また「今だけ特別」「すぐに審査が通る」といった言葉で焦らせ、十分な検討時間を与えない手口も見られます。契約を急がせる業者との取引は避け、慎重に判断を行いましょう。
巧妙化する契約時の落とし穴
悪徳業者は契約時にさまざまな落とし穴を仕掛けています。重要事項を小さな文字で記載したり、契約内容の説明を急がせたりすることで、利用者が気付かないうちに不利な条件を承諾させます。
「分割払いが可能」「手数料のみ支払えば売掛金は据え置き可能」といった提案も特徴です。こうした取引は実質的な貸付となり、貸金業登録のない業者による違法な取引となります。
売掛金の回収ができなかった場合に利用者が弁済する「償還請求権あり」の契約も要注意です。通常のファクタリングは売掛金が未回収となっても利用者に返済義務は発生しません。
被害を防ぐための早期発見ポイント
悪徳業者は事業所の実態がない場合が多く、固定電話を持たず、公式サイトの情報も乏しい傾向にあります。利用前には事業所の所在地や会社概要を必ず確認する必要があります。
見積書や契約書の内容が不明確な場合も危険信号です。相場よりも著しく高い手数料や、見積もりにない追加費用の請求は悪徳業者の可能性が高いといえます。
また、相場より極端に低い手数料を提示する業者も注意が必要です。2社間ファクタリングで5%以下の手数料設定は、何らかの追加費用が隠されている可能性があります。
関連記事:ファクタリングは「やばい」?資金調達のリスクと安全な利用方法を解説
信頼できるファクタリング業者の見分け方

優良なファクタリング業者を選定することで、安全な資金調達が可能となります。適切な業者は明確な特徴を持っており、取引実績や企業の信用度から見分けることができます。正しい判断基準を持つことで、リスクの少ない取引実現へとつながります。
優良企業の基本的な特徴
信頼できるファクタリング業者は、所在地や代表者名、会社の沿革などを公式サイトで明確に開示しています。事業内容や契約条件も透明性をもって公開され、利用者からの問い合わせにも丁寧に対応します。
固定電話や実態のある事業所を持ち、必要書類や審査基準も明確に定められています。手数料は相場の範囲内で、見積もり時と契約時で大きな変更はありません。
契約書の控えもきちんと発行され、重要事項の説明も分かりやすく行われます。ファクタリング以外の追加サービスも充実し、長期的な取引関係を重視する姿勢が見られます。
取引実績や評価の確認方法
信頼できる業者は豊富な取引実績を持っており、継続的な営業実績が確認できます。設立から一定期間が経過し、業界団体への加盟や外部評価機関からの認証も受けています。
利用者からの評価も確認でき、サービス内容や対応に関する具体的な口コミが複数存在します。メディアでの紹介実績や、行政機関との取引実績なども信頼性の指標となります。
サービス説明の資料も充実し、業界の最新動向や法改正への対応状況も把握できます。相談窓口も整備され、トラブル発生時の対応方針も明確です。
企業の信用度を判断する指標
企業の信用度は複数の観点から総合的に判断する必要があります。事業規模や資本金といった基本情報に加え、審査体制の充実度も重要な判断材料となります。
営業年数や累計取引件数、対応可能な取引規模の範囲なども、企業の安定性を示す指標です。顧客サポート体制も整備され、緊急時の連絡体制も明確に定められています。
売掛金の未回収リスクへの対応方針も重要です。優良な業者は償還請求権のない契約を基本とし、リスク管理体制も整備しています。
安全な取引のための具体的な対策

ファクタリング取引を安全に行うためには、事前の準備と適切な確認が欠かせません。以下のポイントを抑えることが重要です。
- 契約前の重要確認事項
- 複数業者から見積もりを取る
- 適切な手続きと法令順守
- 取引記録の管理と保管方法
それぞれについて解説します。
契約前の重要確認事項
契約前には手数料や支払条件、債権譲渡の範囲などを詳細に確認します。とくに手数料については、追加費用の有無や計算方法まで明確にしておく必要があります。
契約書の内容は必ず確認し、不明な点は質問して理解を深めます。重要事項の説明は文書で残し、契約書の控えも必ず受け取ります。
また、取引先への通知の要否や債権譲渡登記の必要性なども、事前に確認しておくポイントです。これらの確認を怠ると、思わぬトラブルの原因となります。
複数業者から見積もりを取る
ファクタリング取引の条件は業者によって大きく異なります。手数料や契約条件を比較するため、複数の業者から見積もりを取得することが賢明です。
見積もりの内容を分析することで、不適切な条件や不透明な費用設定を見抜くことができます。業者の対応や説明の丁寧さも、選定の重要な判断材料となります。
とくに初回取引の際は必ず複数社の見積もりを取得し、業界の相場観を把握しましょう。見積もり時の対応から、その業者の信頼性を判断することも可能です。
適切な手続きと法令順守
ファクタリング取引では、債権譲渡の手続きが正しく行われているか確認が必要です。債権譲渡通知の要否や方法、登記の必要性などは業者によって異なります。取引開始前に必要な手続きを把握し、適切に対応することが求められます。
融資的な要素を含む取引の場合はとくに慎重な判断が必要で、貸金業登録の有無も確認します。手続きの不備は後々のトラブルにつながる可能性があります。
取引記録の管理と保管方法
ファクタリング取引に関する書類は適切に管理・保管する必要があります。見積書や契約書、入金記録などの重要書類は、紙と電子データの両方で保管しましょう。
業者とのやり取りの記録も残しておくことが重要です。電話やメールでの連絡内容、契約条件の変更点なども、時系列で整理しておきます。
万が一のトラブル発生時に備え、取引内容を証明できる資料は必ず保管しましょう。特に重要な書類は複数の場所に保管し、紛失や破損のリスクに備えます。
安心できるファクタリング取引実現へのポイント

安全なファクタリング取引を実現するためには、以下の要素が欠かせません。
- 信頼関係に基づく取引構築のポイント
- 持続可能な資金調達の実践方法
- 安定した財務基盤確立への道筋
下でそれぞれについて解説していきます。
信頼関係に基づく取引構築のポイント
優良なファクタリング業者との信頼関係は日々の取引から築かれます。契約内容の遵守はもちろん、必要な情報を適切に共有することで、安定した取引関係を築くことができます。
支払い期日の順守や取引状況の報告など、基本的なルールを守ることも重要です。問題が発生した際には、早期に相談して解決を図る姿勢が信頼関係を深めます。
持続可能な資金調達の実践方法
ファクタリングは一時的な資金調達手段として有効ですが、過度な依存は避けるべきです。売掛金の回収サイクルを適正化し、資金繰り全体の改善を図る必要があります。
ほかの資金調達手段との組み合わせも検討するのがおすすめです。銀行融資や設備投資向けの助成金など、状況に応じた資金調達方法を活用しましょう。経営状況の改善に向けた取り組みも並行して進めます。売掛先との取引条件の見直しや、支払いサイトの短縮化なども重要な施策となります。
安定した財務基盤確立への道筋
売掛金管理の徹底や回収期間の短縮など、基本的な取り組みが重要です。支払いサイトの見直しや与信管理の強化により、安定した資金繰りの実現が可能となります。
経営計画の見直しや収益構造の改善も必要です。売上高や利益率の向上、固定費の見直しなど、総合的な経営改善に取り組むことで、財務基盤が強化されます。定期的な資金繰り状況の確認と改善策の検討も欠かせません。
まとめ
悪質なファクタリング業者から身を守るためには、さまざまな手口や詐欺的な取引手法を理解し、適切な対策を講じることが不可欠です。信頼できる業者の選定と安全な取引の実践により、効果的な資金調達が可能となります。契約内容の確認や取引記録の管理を徹底し、長期的な視点で取り組むことで、安定した資金繰りの実現につながります。