将来債権ファクタリングとは?メリット・デメリットを解説

将来債権ファクタリングとは?メリット・デメリットを解説

将来債権ファクタリングは、まだ発生していない将来の売掛金を活用した新しい資金調達手法です。従来のファクタリングでは請求書発行後でなければ利用できませんでしたが、将来債権を活用すれば注文書の段階から資金化が可能になります。この記事では、将来債権ファクタリングの仕組みやメリット・デメリット、契約時の注意点について解説します。

目次

将来債権ファクタリングとは

将来債権ファクタリングとは

将来債権ファクタリングは、従来のファクタリングとは異なる新しい資金調達方法として注目されています。まだ発生していない将来の債権を活用するため、資金調達のタイミングが大幅に早まる可能性があります。

ただし、将来債権は未確定な要素を含むため、通常のファクタリングとは異なる特徴や注意点が存在しています。法的な位置づけも含めて、基本的な仕組みを理解しておきましょう。

将来債権ファクタリングとは何か

将来債権ファクタリングとは、まだ発生していない将来の売掛金を対象とした債権譲渡契約です。

通常のファクタリングが確定債権を対象とするのに対し、将来債権ファクタリングは継続的な取引により将来発生する予定の債権を買い取ってもらう仕組みとなっています。

例えば、毎月一定額の取引がある取引先との契約に基づいて、来月や再来月に発生する予定の売掛金を現在の時点で資金化できるのです。商品やサービスの提供が完了していない段階でも、契約や注文書などの根拠があれば債権として認められる場合があります。

通常のファクタリングとの違い

通常のファクタリングでは、商品やサービスの提供が完了し、請求書が発行された確定債権のみが対象となります。一方、将来債権ファクタリングでは、まだ請求書が発行されていない段階や、商品・サービスの提供が完了していない段階でも資金化が可能になります。

資金調達のタイミングにも大きな違いが見られるでしょう。通常のファクタリングは請求書発行後の利用となりますが、将来債権ファクタリングは契約締結時や注文書受領時など、より早い段階での資金化が実現できます。

審査の観点では、通常のファクタリングが確定した債権の回収可能性を重視するのに対し、将来債権ファクタリングでは債権発生の確実性や継続的な取引関係の安定性がより重要視されています。

将来債権ファクタリングの法的位置づけ

将来債権ファクタリングは、2020年4月に施行された改正民法により法的根拠が明確化されました。改正民法第466条の6では、債権の譲渡について「その意思表示の時に債権が現に発生していることを要しない」と規定され、将来債権の譲渡が明文化されています。

法的には債権譲渡契約の一種として位置づけられており、一般的なファクタリングと同様に合法的な取引となっています。

ただし、将来債権が確実に発生する見込みがあることや、債権の内容が特定可能であることなど、一定の要件を満たす必要があります。契約の有効性を確保するためには、債権の発生時期や金額の特定、継続的取引の実績などを適切に証明できる書類の整備が重要でしょう。

将来債権ファクタリングの種類

将来債権ファクタリングの種類

将来債権ファクタリングには、取引の性質や債権の発生パターンに応じて複数の種類があります。それぞれ異なる特徴やメリットを持っているため、自社の事業形態や資金調達のニーズに適した方法を選択することが必要です。

継続的取引型の将来債権ファクタリング

継続的取引型は、既存の取引先との定期的な取引により発生する将来債権を対象としています。毎月一定額の取引がある場合や、長期契約に基づく定期的な売上が見込める場合に適用されます。

例えば、システム保守契約で毎月50万円の売上が確定している場合、向こう6か月分の300万円を将来債権として買い取ってもらうことが可能になります。

過去の取引実績があることで債権発生の確実性が高く、ファクタリング会社にとってもリスクが比較的低い取引類型となっています。審査では、取引先との契約内容や過去の取引履歴、支払い状況などが重要な判断材料となるでしょう。

プロジェクト型の将来債権ファクタリング

プロジェクト型は、特定のプロジェクトや工事案件における将来債権を対象としています。建設業やIT開発などで、長期間にわたるプロジェクトの進捗に応じて分割払いされる場合に活用されます。

建設工事で総額1,000万円の案件を受注し、工事の進捗に応じて250万円ずつ4回に分けて支払われる契約の場合、まだ着工していない段階でも将来の分割払い分を債権として資金化できます。

プロジェクト型では、契約書や設計図書、工程表などの詳細な資料が必要となり、プロジェクトの実現可能性や完成予定時期の妥当性が厳格に審査されます。工期の延長や仕様変更によるリスクも考慮されるため、手数料は他の類型より高く設定される場合があるでしょう。

契約型の将来債権ファクタリング

契約型は、長期契約や基本契約に基づいて発生する将来債権を対象としています。賃貸不動産の家賃収入や、サブスクリプションサービスの継続課金など、契約により確実な収入が見込める場合に適用されます。

不動産賃貸業において、賃貸契約書に基づく今後1年間の家賃収入を将来債権として活用する場合や、SaaS事業で年間契約を締結している顧客からの継続課金を債権化する場合などが該当します。

契約型では、契約書の内容や契約期間、解約条項などが詳細に審査されるでしょう。契約の安定性や継続性が高いほど、有利な条件での資金調達が期待できますが、契約解除や料金改定のリスクも考慮されるため、契約条項の内容によって審査結果が大きく左右される可能性があります。

将来債権ファクタリングの利用プロセス

将来債権ファクタリングの利用プロセス

将来債権ファクタリングの利用には、通常のファクタリングとは異なる手続きや書類の準備が必要になります。将来債権の特性上、より詳細な審査が実施されるため、事前の準備が重要となります。

申込から審査までの流れ

将来債権ファクタリングの申込では、まず取引先との契約内容や取引実績について詳細な情報提供が求められます。

ファクタリング会社に対して、将来債権の発生根拠となる契約書や注文書、過去の取引履歴などを提示。審査では、将来債権の発生確実性や回収可能性が重点的に検討されます。取引先の信用力や財務状況、過去の支払い実績、契約の継続性などが総合的に評価されるでしょう。

通常のファクタリングに比べて審査期間が長くなる傾向があり、2~3営業日程度を要する場合があります。審査結果に基づいて、買取可能額や手数料率、契約条件が提示され、条件に合意できれば契約締結に進むことになります。

必要書類と準備

将来債権ファクタリングでは、債権の発生根拠を証明する書類の準備が重要となります。

基本契約書や個別契約書、注文書、発注書など、将来債権の発生を裏付ける書類を整備する必要があります。

取引先との過去の取引実績を示す書類も重要な審査材料です。過去の請求書や入金確認書類、取引履歴などを用意し、継続的な取引関係や支払い状況を証明することが求められるでしょう。

取引先の信用情報や財務状況に関する資料も求められる場合があります。取引先の決算書や信用調査報告書、業界動向に関する情報などを提供することで、より有利な条件での契約につながる可能性があります。自社の財務状況を示す決算書や試算表、銀行口座の取引履歴なども一般的に必要となるでしょう。

契約締結と資金化のタイミング

契約締結では、将来債権の譲渡に関する詳細な条件を確認することになります。債権の対象期間や金額、手数料率、償還請求権の有無、債権未実現時の取り扱いなどを明確に定めることが重要です。

資金化のタイミングは、契約締結と同時に一括で行われる場合と、将来債権の発生に応じて分割で行われる場合があります。

一括資金化では、契約締結後に買取代金が一度に支払われる仕組みになっています。分割資金化では、月次や四半期ごとに債権の発生状況に応じて資金が提供されるでしょう。

債権の回収については、通常のファクタリングと同様に、債権が実際に発生した後に取引先から直接回収されるか、利用者が代理回収を行う形となります。

将来債権ファクタリングのメリット

将来債権ファクタリングのメリット

将来債権ファクタリングには、従来の資金調達方法にはない独特のメリットがあります。特に、資金調達のタイミングや柔軟性の面で大きな優位性を持っています。

早期の資金化、既存債権に依存しない資金調達、長期的な資金計画の立案など、事業運営の改善に直結するメリットを理解しておきましょう。

早期の資金化が可能になる

将来債権ファクタリングの最大のメリットは、商品やサービスの提供完了前に資金を調達できることにあります。

通常のファクタリングでは請求書発行後でなければ利用できませんが、将来債権ファクタリングでは契約締結時や注文書受領時に資金化が可能となります。

建設業では、工事着工前に材料費や人件費の支払いが必要になりますが、将来債権ファクタリングを活用すれば工事代金の一部を事前に資金化できます。

手持ち資金の不足による工事の遅延や品質低下を防げるでしょう。IT業界でも、システム開発案件において開発着手前に外部委託費や人件費が発生しますが、将来債権ファクタリングにより必要な資金を早期に確保できます。

既存債権がなくても資金調達が可能

通常のファクタリングでは、既に発生している確定債権が必要となります。しかし、将来債権ファクタリングでは現在保有している債権の有無に関係なく資金調達ができます。

新規事業の立ち上げ時や、大型案件の受注直後など、まだ請求書を発行していない段階でも活用できます。

季節性のある事業において、繁忙期前の準備資金として将来債権ファクタリングを活用することで、売上の波に左右されない安定した資金調達が実現できるでしょう。例えば、年末商戦向けの商品製造において、秋口に将来の売上を資金化して製造資金に充てることが可能です。スタートアップ企業や新規事業において、まだ実績が少ない段階でも、確実な契約や注文があれば将来債権ファクタリングによる資金調達が期待できます。

長期的な資金計画が立てやすくなる

将来債権ファクタリングでは、複数月にわたる将来債権を一括で資金化することで、中長期的な資金計画を立てやすくなります。向こう半年から1年間の売上を見込んで資金調達することで、安定した事業運営が可能になります。

分割払い型の将来債権ファクタリングでは、毎月一定額の資金提供を受けることで、キャッシュフローの安定化が図れます。

売上の入金タイミングのズレによる資金不足を解消し、計画的な事業運営を支援するでしょう。設備投資や人材採用など、中長期的な投資計画を立てる際にも、将来債権ファクタリングによる安定した資金調達が活用できます。

将来債権ファクタリングのデメリット

将来債権ファクタリングのデメリット

将来債権ファクタリングには多くのメリットがある一方で、注意すべきデメリットも存在しています。将来債権の不確実性に起因するリスクや、コスト面での課題を理解しておくことが重要でしょう。

契約条件や審査基準が厳格になることがある

将来債権ファクタリングでは、債権の発生が不確実であるため、通常のファクタリングより厳格な審査基準が適用されることがあります。取引先との契約内容や取引実績、業界動向などが詳細に審査され、承認までに時間がかかる場合があります。

契約条件についても、将来債権のリスクを反映して厳しい条件が設定される場合があります。

債権の未実現時の責任分担や、取引先の信用悪化時の対応など、詳細な条項が盛り込まれるでしょう。ファクタリング会社によって取り扱い方針が大きく異なり、将来債権ファクタリングに対応していない会社も多く存在しています。選択肢が限られることで、条件面での交渉力が制限される可能性があります。

将来債権の不確実性への対策が必要

将来債権は、その名の通り将来発生する予定の債権であり、必ずしも予定通りに実現するとは限りません。

取引先の経営状況の悪化や、プロジェクトの中止・延期により、予定していた債権が発生しない可能性があります。契約内容の変更や仕様変更により、債権の金額や支払い時期が変わることもあるでしょう。

特に長期プロジェクトでは、途中での条件変更が発生しやすく、当初の予定と異なる結果となるリスクがあります。債権が未実現となった場合の対応について、事前に十分な検討と準備が必要となります。代替的な資金調達手段の確保や、事業計画の見直しなど、リスク管理体制を整備しておくことが重要です。

資金調達コストが通常のファクタリングより高くなる可能性

将来債権ファクタリングでは、債権の不確実性というリスクを反映して、通常のファクタリングより高い手数料が設定される傾向があります。

手数料率が数パーセント高くなることもあり、資金調達コストの上昇に注意が必要でしょう。審査や契約手続きが複雑になることで、事務手数料や登記費用などの諸費用も高くなる場合があります。

また、債権の管理や回収に係る費用も考慮する必要があるのです。長期間にわたる将来債権を一括で資金化する場合、金利負担に相当するコストが発生する可能性もあります。資金調達の総コストを適切に算出し、他の資金調達手段との比較検討を行うことが重要でしょう。

将来債権ファクタリングの契約ポイント

将来債権ファクタリングの契約ポイント

将来債権ファクタリングの契約では、通常のファクタリング以上に詳細な検討が必要となります。将来債権特有のリスクに対する適切な対策を契約書に盛り込むことで、トラブルを未然に防げるでしょう。

契約書の重要チェックポイント

将来債権ファクタリングの契約書では、対象となる債権の範囲と条件を明確に定義することが重要になります。債権の発生時期、金額、支払い条件などを具体的に記載し、曖昧な表現を避けることが必要でしょう。

償還請求権の有無について、明確に規定する必要があります。将来債権が実現しなかった場合の責任分担を明確にし、利用者とファクタリング会社の権利義務を明確に定めます。

債権譲渡通知の取り扱いについても重要なポイントとなります。取引先への通知時期や方法、通知による取引関係への影響などを慎重に検討する必要があるでしょう。

手数料設定の考え方

将来債権ファクタリングの手数料は、債権の不確実性やリスクの程度に応じて設定されることになります。取引先の信用力や業界特性、債権の発生確率などが手数料率に影響されます。

継続的な取引実績がある場合は、リスクが低いと判断されて手数料が抑えられる可能性があります。

一方、新規取引先や長期プロジェクトでは、リスクが高いと判断されて手数料が高く設定される場合があるでしょう。手数料の支払い方法についても検討が必要です。一括前払い、分割払い、成功報酬型など、複数の選択肢がある場合は、自社の資金状況や事業計画に適した方法を選択することが重要となります。

将来債権が予定通り実現しなかった場合の対応について、事前に十分な検討と準備が必要となります。

債権の一部未実現や支払い遅延に対する対応策を契約書に明記し、リスクを適切に管理することが求められるでしょう。代替債権の提供や追加担保の設定など、債権未実現時の補償方法について検討することが重要です。

また、取引先の信用状況をモニタリングする仕組みを構築し、早期にリスクを察知できる体制を整備する必要があります。保険や保証制度の活用も検討の価値があるでしょう。債権保険や信用保証などを組み合わせることで、債権未実現時のリスクを軽減できる場合があります。

まとめ

将来債権ファクタリングは、従来の資金調達では困難だった早期の資金化を実現する革新的な手法といえるでしょう。請求書発行前の段階から資金調達が可能になることで、事業運営の柔軟性が大幅に向上し、成長機会を逃すリスクを軽減できます。

将来債権ファクタリングを検討する際は、自社の事業形態や資金需要に適した種類を選択し、複数のファクタリング会社から条件を比較検討することをお勧めいたします。適切な活用により、資金繰りの改善と事業成長の加速を実現できることでしょう。

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