個人事業主にとって、売掛金の支払いを待つ間の資金繰りは大きな課題です。ファクタリングはそんな悩みを解決する手段として注目されていますが、「通帳がないと利用できないのでは?」と不安に思う方も多いでしょう。実は、条件次第では個人通帳なしでもファクタリングを利用できるケースがあります。
本記事では、個人事業主がファクタリングを利用する基本的な仕組みから、通帳なしで利用する際の条件、代替書類、審査のポイントまで詳しく解説します。また、オンライン申請の手順や書類提出時の注意点なども紹介し、資金調達をスムーズに進めるためのノウハウをお届けします。
資金繰りに悩む個人事業主の方が、新たな選択肢としてファクタリングを検討する際の参考になれば幸いです。
個人事業主のファクタリングとは

個人事業主にとって、事業継続に資金繰りは欠かせません。特に売掛金が発生するビジネスモデルでは、入金までの期間が長引くこともあり、その間の運転資金確保が課題となります。
ファクタリングはそんな課題を解決する選択肢の一つで、売掛金を即時現金化できるサービスとして注目されています。ただし、利用には一定の条件があり、特に通帳の取り扱いについては事前に知っておくべき点があります。
ファクタリングの基本的な仕組み
ファクタリングは、未回収の売掛金をファクタリング会社に売却して、すぐに現金化するサービスです。通常、売掛先からの入金を待つ必要がありますが、ファクタリングを利用すると支払期日を待たずに資金調達できます。
取引形態には2社間と3社間のファクタリングがあり、2社間は売掛先に知られずに利用でき、3社間は売掛先も含めた契約です。ファクタリング会社は売掛金を買い取る際、手数料を差し引いた金額を支払います。この手数料率は一般的に2社間で10%~20%、3社間で1%~9%程度です。
融資ではなく債権売買のため、返済義務がなく、事業の信用情報に影響せず資金調達できる点がファクタリングの大きな特徴といえます。
個人事業主がファクタリングを利用するメリット
個人事業主がファクタリングを活用する最大の利点は、資金繰りの安定化です。売掛金の入金を待たずに即時現金化できるため、支払いに困ることなく事業を円滑に進められます。また、銀行融資とは異なり審査基準が売掛先の信用力に重点を置くため、開業間もない個人事業主でも利用しやすいという特徴があります。決算書の提出が不要なケースも多く、手続きが簡素化されていることから、急な資金需要にも対応できます。
さらに、ファクタリングは借入ではないため、返済義務がなく負債として計上されません。将来的な融資枠を残しておきたい場合や、負債比率を低く保ちたい場合に有効な選択肢といえるでしょう。
通常のファクタリングに必要な書類
一般的なファクタリングを利用する場合、いくつかの必要書類を提出する必要があります。
- 本人確認書類:運転免許証やマイナンバーカードなど
- 請求書:売掛金の存在を証明
- 通帳のコピー:売掛先との継続的な取引関係や支払い実績を確認。通常2~6ヶ月分の取引記録
そのほかにも、売掛先との基本契約書や納品書、開業届や確定申告書などが補足的に求められることがあります。
ファクタリング会社によって必要書類は異なり、中には請求書と通帳、本人確認書類の3点だけで利用できるところもあります。
個人通帳なしでのファクタリング利用は可能か

一般的にファクタリングでは通帳の提出が求められますが、状況によっては通帳なしでも利用できる可能性があります。ファクタリング会社は通帳を確認することで、売掛金の実在性や売掛先の支払い能力を確認しますが、代替手段で証明できる場合もあるためです。
通帳なしでファクタリングを利用できる条件
通帳なしでファクタリングを利用するには、いくつかの条件を満たす必要があります。
- 売掛先の信用力が高い:大手企業や官公庁など、支払い能力が明らかに高い取引先であれば、通帳なしでも審査に通りやすくなる
- 取引実績が豊富なこと:売掛先との長期的な取引関係を示す基本契約書や過去の納品書、請求書などが揃っていれば、通帳の代わりとなる証拠として認められることがある
- ファクタリング会社の利用実績がある:一度利用して信頼関係ができていれば、2回目以降は請求書のみで利用できるファクタリング会社も存在する
さらに、買取額が少額の場合は審査が緩やかになる傾向があるため、通帳なしでファクタリングを利用する場合、初回は少額から始めると審査に通りやすくなるでしょう。
通帳の代わりに使える書類・証明方法
通帳の提出が難しい場合でも、代替となる書類や証明方法があります。
- インターネットバンキングの取引履歴のPDFやCSVデータ:多くのファクタリング会社では、紙の通帳に代わってこれらの電子データも受け付けている
- 売掛先との取引を示す契約書や発注書、納品書などの一連の書類:時系列で整理して提出することで、取引の実在性を証明できる
- 売掛先からの入金確認メールやLINEなどのやり取り:補助的な証拠になる
- 請求書の受領確認:売掛先から取得できれば、売掛金の存在を裏付ける有力な証拠となる
これらの代替書類を組み合わせて提出することで、通帳なしでもファクタリングを利用できる可能性が高まります。
通帳なしでも審査に通るためのポイント
通帳なしでファクタリング審査に通過するためには、次のポイントを押さえておきましょう。
- 売掛先の信用性を明確に示す:上場企業や公的機関との取引であれば、その情報を強調する
- 取引の継続性を証明する:同じ取引先と長期間にわたって安定した取引があることを示す資料を整えておく
- 売掛金額が適正である:過度に高額な請求は疑念を招くため、通常の取引範囲内であることを示す過去の取引実績を用意する
- 通帳以外の補助資料をできるだけ多く準備する:基本契約書、発注書、納品書、請求書などを揃え、取引の流れを一貫して示せるようにする
そのほかにも、ファクタリング会社との事前相談も欠かせません。通帳がない理由を正直に説明し、代替資料についても相談するとスムーズに進むことが多いようです。
通帳なしでファクタリングを利用する際の必要書類

通帳なしでファクタリングを利用する場合、ほかの書類をしっかり揃える必要があります。ファクタリング会社は売掛金の実在性や取引の信頼性を確認するために、通常より詳細な書類を求める傾向があります。
ここでは、通帳の代わりに用意すべき基本的な書類と、審査を有利に進めるための補助的な書類について詳しく解説します。
本人確認書類(免許証、マイナンバーカードなど)
通帳なしでファクタリングを利用する際、本人確認書類は最も基本的な必要書類です。運転免許証やマイナンバーカード、パスポート、住民基本台帳カードなどが一般的に認められています。これらは申込者が実在する人物であることを証明します。法人の場合は代表者の本人確認書類が必要になり、個人事業主の場合は事業主本人の書類が求められます。
書類は有効期限内のものが必要で、住所変更がある場合は裏面も含めて提出します。また、顔写真付きの書類が優先されるため、健康保険証のみの提出では不十分なこともあります。
本人確認書類は契約の基本となる重要な書類なので、鮮明な状態でコピーまたはスキャンし、提出の際には情報が欠けないよう注意しましょう。
事業実績を証明する書類
個人事業主であれば、開業届のコピーが事業の存在を公的に証明する基本の書類です。また、直近の確定申告書や所得税の納税証明書も有効です。
また、青色申告をしている場合は、青色申告決算書も提出すると良いでしょう。事業規模や売上高が確認できるため、信頼性が高まります。白色申告の場合でも、収支内訳書が役立ちます。
さらに、事業に関連する許認可証や資格証明書なども補助的な書類として活用できます。専門性の高い事業であることを示せば、取引の信頼性も高まるためです。これらの書類は、事業が実際に存在し適切に運営されていることを証明する材料となります。
売掛先との取引を証明する書類
まず売掛先との基本契約書は、継続的な取引関係の証明になるため必須です。契約書に取引条件や支払条件が記載されていると、より説得力が増します。次に、売掛金の発生源となる請求書も欠かせません。請求書には売掛先の情報や金額、支払期日などが明記されている必要があります。
また、発注書や注文書があれば取引の開始点を示す証拠となり、納品書や検収書は、商品やサービスが実際に提供されたことの証明になるため、揃えておくと良いでしょう。売掛先からの受領確認メールや、過去の支払い実績を示す入金通知なども有効です。
これらの書類を時系列で整理し、一連の取引プロセスを示せるよう準備することで、通帳がなくても取引の実在性を証明できます。
その他補助的に用意すると良い書類
審査を有利に進めるために、用意したい補助的な書類は以下のとおりです。
- 事業計画書
- 取引先リスト
- 事務所や店舗の賃貸契約書
- (銀行融資を受けている場合)融資契約書
- 業界団体への加入証明、各種保険加入証明書、など
これらの補助書類は単体では決定的な効果はないものの、総合的に判断材料となり、審査の通過率を高める助けになります。
通帳なしでファクタリングを申請する方法

通帳なしでファクタリングを申請する際は、通常より慎重に準備する必要があります。ここでは、スムーズに申請するための具体的な手順や注意点について解説していきます。
オンライン申請の手順
通帳なしでファクタリングを申し込む場合、多くの業者ではオンライン申請が可能です。
まず業者の公式サイトから会員登録を行い、専用アカウントを作成します。基本情報として氏名、住所、連絡先などの個人情報と事業内容を入力し、必要書類をスキャンまたは撮影してアップロードします。本人確認書類や売掛金の証明書類などを、指示に従って送信しましょう。通帳がない旨を伝える際は、理由と代替書類について備考欄などに記入します。
書類送信後、審査が開始され、不明点があれば担当者から連絡が入ります。審査に通過したら、契約内容の確認を行い、電子契約システムなどで契約を締結します。契約が完了すると指定口座に買取金額が振り込まれるのが一般的な流れです。
オンライン申請は24時間受付可能な場合が多く、急ぎの資金調達にも対応できるメリットがあります。
書類提出時の注意点
まず全ての書類は鮮明で読みやすいものを準備しましょう。ぼやけた画像や一部が切れた書類は審査の遅延原因となります。
次に、請求書の金額と他の証明書類の金額が一致しているか、宛名や日付に矛盾がないか確認します。特に通帳の代わりとなる書類は、時系列で整理し、取引の流れが分かりやすいようにまとめると良いでしょう。
また、書類の有効期限に注意が必要です。期限切れの本人確認書類や古すぎる取引資料は信頼性に欠けます。個人情報保護の観点から、マイナンバーなど不要な個人情報は黒塗りしておきたいところです。
提出前に書類のチェックリストを作成し、漏れがないか確認しましょう。不明点があれば事前にファクタリング会社に問い合わせるのもおすすめです。
審査から資金化までの流れ
申請がされると、ファクタリング会社は提出された書類を基に審査を開始します。通常、売掛先の信用力や取引の実在性を重点的に確認しますが、代替書類の確認に時間がかかることがあり、審査期間が通常より長引く場合もあります。
審査中に不明点があれば、電話やメールで追加確認が入ります。審査をスムーズに進めるには、迅速かつ丁寧に対応することを心がけましょう。
審査通過後は買取価格の提示があり、条件に合意すれば契約締結へと進みます。契約書への署名は電子署名システムを利用することが多いですが、郵送や来店での対応を求められる場合もあります。契約完了後、最短即日から数日以内で指定口座へ入金されます。
初回利用の場合は慎重に審査されますが、利用実績を積むことで次回以降はよりスムーズになるでしょう。
請求書のみで個人事業主がファクタリング利用できる場合もあるが手数料は高い傾向

個人事業主が請求書のみで利用できるサービスも一部存在します。たとえば、あるファクタリング会社では、初回限度額を少額に設定することで、請求書と本人確認書類のみで利用できるようにしました。
継続利用を前提とするサービスで、初回は通帳などの書類が必要ですが、2回目以降は請求書のみで利用できる場合があります。また、フリーランス向けのファクタリングサービスの中には、独自の会員制度を設け、会員登録後は請求書のみで利用できるものもあります。
ただし、これらのサービスは通常、手数料が高めに設定されている点に注意しましょう。審査簡略化によるリスク増加の対価ともいえます。利便性を重視するか、コストを重視するか、自身の優先事項に合わせて選択することが大切です。
まとめ
個人事業主が通帳なしでファクタリングを利用することは、条件付きながら可能です。通帳は売掛先との取引実績や支払い能力を証明する重要書類ですが、インターネットバンキングの取引履歴や契約書類の組み合わせで代替できる場合があります。通帳なしで審査を通すには売掛先の信用力証明と取引の継続性実証が鍵となります。ただし、審査難易度が上がり手数料が高くなる点には注意が必要です。
各ファクタリング会社によって対応は異なるため、事前に通帳なしで利用可能か確認し、必要書類や条件について相談することをお勧めします。資金繰り状況と優先順位を見極め、自身の状況に合ったファクタリングサービスを選ぶことが大切です。