架空債権ファクタリング詐欺で逮捕!増加する事例と対策

架空債権ファクタリング詐欺で逮捕!増加する事例と対策

ファクタリングは、売掛債権を早期に資金化できる正当な金融取引であり、多くの中小企業や個人事業主にとって有効な資金調達手段です。しかし、その利便性を悪用した詐欺行為も残念ながら存在し、利用者が加害者となるケース、あるいは悪質な業者が詐欺的な行為を行うケースの双方が報告されています。本記事では、近年増加傾向にあるとされる架空債権を用いたファクタリング詐欺をはじめ、様々な不正事例とその法的責任、そしてファクタリングを正しく安全に利用するための対策について詳しく解説します。

目次

ファクタリング業者には違法性ゼロ!

ファクタリング業者には違法性ゼロ!

まず大前提として、ファクタリングという金融取引自体は、民法にも規定されている債権譲渡契約に基づく合法的な行為です。適切に運営されているファクタリング会社は、法令を遵守し、企業の資金繰りを円滑にするための重要な役割を担っています。

したがって、ファクタリングサービスそのものに違法性は一切ありません。問題となるのは、この仕組みを悪用しようとする一部の利用者や、ファクタリングを隠れ蓑にして違法な貸付などを行う悪質な業者の存在です。

利用者による不正なファクタリング詐欺事例

利用者による不正なファクタリング詐欺事例

ファクタリングは信頼関係に基づいて行われる取引ですが、残念ながら利用者側が悪意を持ってファクタリング会社を欺く詐欺行為も発生しています。これらの行為は犯罪であり、発覚すれば法的な責任を問われることになります。

請求書偽造にして架空債権をファクタリング

利用者によるファクタリング詐欺の典型的な手口の一つが、実際には存在しない取引に基づいて請求書を偽造し、それをファクタリング会社に買い取らせるというものです。これは、売掛先との間に商取引の実態がないにもかかわらず、あたかも売掛債権が存在するかのように装い、資金を騙し取る行為です。ファクタリング会社は審査を行いますが、巧妙に偽造された書類や口裏合わせによって、一時的に審査を通過してしまうケースも報告されています。

請求書の金額を水増してファクタリング

実際に取引は存在するものの、その請求書の金額を実際よりも多く書き換えて(水増しして)ファクタリング会社に提出し、より多くの資金を得ようとする行為も詐欺にあたります。

例えば、100万円の売掛債権しかないにもかかわらず、請求書を改ざんして300万円の債権があるように見せかけ、その水増しされた金額に基づいて資金調達を行うケースです。これもファクタリング会社を欺く不正行為です。

債権の二重譲渡

すでにファクタリング会社Aに売却した売掛債権を、さらに別のファクタリング会社Bにも売却し、双方から資金を騙し取る行為を債権の二重譲渡といいます。一度譲渡した債権の所有権はファクタリング会社に移っているため、それを再度他社に譲渡することはできません。

これは明確な契約違反であり、詐欺行為に該当します。ファクタリング会社は、このようなリスクを避けるために債権譲渡登記などを活用することがあります。

不良債権の譲渡

売掛先がすでに倒産している、あるいは支払い能力がないことを知りながら、その事実を隠して回収見込みのない売掛債権(不良債権)をファクタリング会社に買い取らせる行為も、詐欺とみなされる可能性があります。

特に、ノンリコース(償還請求権なし)契約の場合、ファクタリング会社が回収不能リスクを負うことを悪用した手口と言えます。

売掛金を支払にに充てずに流用する

2社間ファクタリングにおいて、利用者は売掛先から売掛金を回収した後、速やかにファクタリング会社にその資金を送金する義務があります。しかし、回収した売掛金をファクタリング会社に支払わず、他の用途に流用してしまうケースがあります。これは契約違反であると同時に、場合によっては横領罪や詐欺罪に問われる可能性のある深刻な不正行為です。

要注意!悪徳業者によるファクタリング詐欺事例

要注意!悪徳業者によるファクタリング詐欺事例

利用者だけでなく、ファクタリング業者側が悪質な手口で詐欺的な行為を行うケースも存在します。これらの業者は、ファクタリングを装いながら実質的に違法な高金利貸付を行っていることが多く、注意が必要です。

給与ファクタリングによる貸し付け行為

個人が将来受け取る給与を債権とみなし、それを買い取るという名目で行われる「給与ファクタリング」は、実質的には貸金業法の規制対象となる貸付に該当すると金融庁や裁判所が判断しています。貸金業登録を受けていない業者がこれを行えば違法であり、非常に高い手数料(実質的な利息)を請求されるケースが多く、多重債務の原因となることもあります。

法外な金利や手数料による貸し付け行為

ファクタリングの手数料には一定の相場がありますが、悪質な業者はこれらを大幅に逸脱した法外な手数料を請求してくることがあります。年利に換算すると利息制限法や出資法の上限金利をはるかに超えるようなケースもあり、これは実質的な違法貸付(ヤミ金融)に他なりません。契約前に手数料の内訳や実質年率などを慎重に確認する必要があります。

契約内容と相違ある貸し付け行為

ファクタリング契約を締結したはずなのに、実際には担保や保証人を要求されたり、償還請求権がない(ノンリコース)契約と説明されていたにもかかわらず、売掛先からの回収が滞ると利用者に対して厳しい取り立てが行われたりするなど、契約内容と異なる実態の取引を強いる悪質なケースもあります。契約書の内容を隅々まで確認し、少しでも不明な点があれば契約しないことが重要です。

詐欺行為が発覚した場合に問われる罪

詐欺行為が発覚した場合に問われる罪

ファクタリングにおける不正行為は、民事上の責任だけでなく、刑事上の責任を問われる可能性もあります。どのような罪に該当しうるのか、利用者側と業者側それぞれについて見ていきましょう。

利用者が問われる罪

利用者が架空債権の譲渡や請求書の偽造・水増し、債権の二重譲渡などによってファクタリング会社から資金を騙し取った場合、刑法上の詐欺罪(刑法246条)に問われる可能性があります。詐欺罪は10年以下の懲役に処される重い犯罪です。

また、2社間ファクタリングで売掛先から回収した資金をファクタリング会社に支払わずに流用した場合は、横領罪(業務上横領罪の場合は刑法253条)に該当する可能性も考えられます。

悪徳業者が問われる罪

ファクタリングを装って実質的に貸付を行い、法外な金利(手数料)を徴収する悪質な業者は、貸金業法違反や出資法違反に問われる可能性があります。貸金業登録を受けずに貸金業を営むこと自体が違法であり、また、出資法に定められた上限金利を超える金利での貸付も処罰の対象となります。

さらに、取り立ての際に脅迫的な言動や暴行があれば、恐喝罪や脅迫罪、暴行罪などが成立することもあります。

ファクタリングを正しく利用するためには

ファクタリングを正しく利用するためには

ファクタリングは適切に利用すれば非常に有効な資金調達手段です。トラブルを避け、安全に活用するためには、以下の点を心がけることが重要です。

必ず正当な売掛債権を利用する

ファクタリングの対象とする売掛債権は、必ず実際に存在する正当なものでなければなりません。架空の取引に基づく請求書や、金額を水増しした請求書を利用することは、詐欺行為にあたります。ファクタリング会社との信頼関係を損なうだけでなく、法的な責任を問われるリスクがあることを強く認識する必要があります。

ファクタリングのリールを理解しておく

ファクタリングには、2社間ファクタリングと3社間ファクタリングの違い、償還請求権の有無など、いくつかの重要なルールや契約形態があります。これらの仕組みを事前にしっかりと理解しておくことが、トラブルを避けるためには不可欠です。

特に、契約書に記載されている条項は細部まで確認し、不明な点は必ずファクタリング会社に説明を求めるようにしましょう。

手数料の相場を調べておく

ファクタリングの利用には手数料が発生しますが、その料率にはある程度の相場が存在します。2社間ファクタリングと3者間ファクタリングでは手数料率が異なり、また、売掛先の信用度や債権額によっても変動します。

事前に複数のファクタリング会社の見積もりを比較したり、インターネットなどで手数料の相場感を調べておいたりすることで、法外な手数料を請求する悪質な業者を見抜く一助となります。

契約書類の内容をチェックする

ファクタリング契約を締結する際には、契約書の内容を隅々まで確認することが最も重要です。手数料の具体的な金額や計算方法、償還請求権の有無、支払い条件、遅延損害金に関する規定、解約条件などをしっかりと読み込み、理解できない点や不利だと感じる条項がないかを確認しましょう。安易に契約せず、必要であれば専門家(弁護士など)に相談することも検討すべきです。

まとめ

ファクタリングは、企業が抱える売掛債権を迅速に現金化し、資金繰りを改善するための有効な手段です。

しかし、その利便性を悪用した架空債権による詐欺や、ファクタリングを装った違法な高金利貸付を行う悪質な業者の存在も無視できません。利用者側が不正を行えば詐欺罪などに問われるリスクがあり、また、悪質な業者に関わってしまうと、かえって経営を圧迫する事態に陥りかねません。

 ファクタリングを正しく、そして安全に利用するためには、その仕組みやルールを正確に理解し、必ず正当な売掛債権を用いること、手数料の相場感を把握すること、そして何よりも契約書の内容を徹底的に確認することが不可欠です。信頼できるファクタリング会社を選び、健全な資金調達を行うことで、事業の安定と成長を目指しましょう。

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