ファクタリングとは?売掛金と債権の関係

ファクタリングとは?売掛金と債権の関係

資金繰りが厳しいが、借入は避けたい」「未回収の売掛金を早く現金化したい」と感じている経営者の方へ。
本記事では、企業が保有する売掛債権を活用して現金を素早く手に入れられる手法「ファクタリング」について詳しく解説します。
ファクタリングは、借入ではなく売掛金の売却による資金調達方法で、財務状況に負担をかけることなく現金化できるのが大きな特徴です。中小企業や個人事業主の間でも注目が集まっており、スピーディーな資金調達手段として急速に広がっています。
記事内では、ファクタリングの仕組みからメリット・デメリット、2社間・3社間といった方式の違い、さらに利用時の比較ポイントまで詳しく紹介します。
最後まで読むことで、自社に最適な資金調達方法が明確になり、より安定した事業運営につなげるための判断材料が手に入ります。

目次

ファクタリングとは?

ファクタリングとは?

ファクタリングとは、企業が保有している売掛金(未回収の代金請求権)を、ファクタリング会社に売却することで資金を早期に調達する手法です。通常、売掛金は取引先との取り決めにより、請求から数十日後に入金されるため、企業の資金繰りを圧迫する原因となります。ファクタリングを利用すれば、その回収を待たずに現金化できるため、資金繰りの改善や急な資金需要に柔軟に対応できます。また、借入とは異なり、帳簿上は負債として計上されないため、企業の財務体質を悪化させることなく利用可能な資金調達方法として注目されています。特に中小企業や個人事業主にとっては、審査が比較的緩やかでスピード感のある資金調達手段として支持を集めています。

売掛金とは?

売掛金とは、企業が商品やサービスを提供したあと、顧客から後日に受け取ることが予定されている代金のことです。たとえば、月末締め翌月末払いといった取引慣行により、商品を納品してもすぐに現金が手元に入るわけではなく、入金されるまで一定の期間が発生します。この未回収の状態の代金が「売掛金」です。売掛金は企業の資産として帳簿に計上されますが、実際の資金として活用するには回収まで待つ必要があり、このタイムラグが資金繰りに影響を及ぼすことがあります。そのため、売掛金を現金化する方法として、ファクタリングが活用されています。売掛金をスムーズに資金化することで、企業は運転資金を安定させ、経営をスピーディに展開できるようになります。

売掛金を買取できる仕組み

ファクタリングによる売掛金の買取は、企業が持つ売掛債権をファクタリング会社が譲り受け、代わりに現金を支払う仕組みです。売掛金は将来的に現金化が見込まれる資産であるため、それを担保にせずとも現金化できる点が大きな特徴です。ファクタリング会社は、売掛先の信用力や支払い実績などを調査したうえで、売掛金の買取価格を設定します。取引が成立すれば、数日以内に資金が振り込まれ、企業はすぐにその資金を運用できます。また、売掛先からの入金はファクタリング会社が受け取るか、場合によっては企業が代行して受け取り、ファクタリング会社へ支払う形になります。いずれにしても、企業側にとっては早期の資金調達手段として、非常に効率の良い手段です。

ファクタリングの種類

ファクタリングには主に「2社間ファクタリング」と「3社間ファクタリング」の2種類があり、それぞれに特徴と適した利用場面があります。それぞれの特徴を踏まえて、企業の状況に合ったファクタリング方式を選ぶことが重要です。

2社間ファクタリングとは

2社間ファクタリングとは、売掛債権を持つ企業とファクタリング会社の2者だけで取引を行う方法です。この方式では、売掛先に通知や同意を得る必要がないため、企業は取引先に知られずに資金調達を進められます。取引先との関係性を大切にしたい企業や、業績の事情で債権譲渡を知られたくない場合に適しています。一方で、ファクタリング会社にとっては売掛先の支払い能力を直接確認できないため、リスクが高いとされ、手数料がやや高くなる傾向があります。また、売掛先からの入金は企業が一旦受け取ってからファクタリング会社に送金する形になるため、資金の流れや管理に注意が必要です。即日対応や少額対応など柔軟な条件で利用できる点も魅力のひとつです。

3社間ファクタリングとは

3社間ファクタリングは、売掛先企業の同意を得たうえで、売掛金の支払先をファクタリング会社に変更する方式です。契約には、債権を売却する企業・ファクタリング会社・売掛先の3者が関与します。売掛先が債権譲渡を承認することで、ファクタリング会社は直接代金の支払いを受け取るため、回収リスクが低く抑えられます。この信用力の高さにより、手数料も2社間方式に比べて低くなるのが特徴です。ただし、売掛先にファクタリング利用を知らせる必要があるため、資金繰りの状況が明らかになり、取引関係に影響を及ぼす可能性もあります。そのため、利用前には売掛先との信頼関係や契約内容の調整が必要不可欠です。信頼性やコスト面を重視する場合に適した選択肢といえます。

ファクタリングによる売掛金買取のメリット

ファクタリングによる売掛金買取のメリット

では実際にファクタリングによる売掛金買取にはどんなメリットがあるのかご紹介します。

新たに借金が増えない

ファクタリングは融資とは異なり、借入による負債を抱えることなく、売掛債権を現金化できる資金調達手法です。そのため、バランスシート上でも負債の増加としては扱われず、企業の信用格付けや資金調達能力に影響を与えることなく利用できます。特に銀行からの借入限度額に達している企業や、これ以上借入を増やしたくない企業にとって、ファクタリングは有効な資金調達手段です。財務上の健全性を維持しながらも、必要な資金を確保できるという点は、事業の安定運営において非常に大きな利点となります。さらに、資金の使途も自由であるため、運転資金だけでなく、急な設備投資や取引先への支払いにも柔軟に対応できます。

迅速な資金調達が可能

ファクタリングの最大の魅力の一つは、申し込みから資金入金までが非常にスピーディである点です。一般的な金融機関の融資に比べ、審査にかかる時間が短く、早ければ即日から数営業日以内に資金を手にすることが可能です。特に、2社間ファクタリングの場合は売掛先への確認が不要なため、より迅速な対応が可能となります。突発的な支払いや資金不足の場面で、タイミングを逃さずに資金を調達できるという点は、多くの企業にとって大きな安心材料となります。スピード感が求められるビジネスシーンにおいて、迅速な資金調達は事業の継続性を確保するために重要な役割を果たします。

業績が悪い場合も利用できる

ファクタリングは、融資のように申込企業の信用状況を重視するのではなく、売掛先の信用力を基準に審査が行われるのが特徴です。そのため、業績が悪化している企業や赤字決算が続いている場合でも、売掛先に信用力があれば利用することが可能です。一般的な金融機関の審査では融資を受けるのが難しいようなケースでも、ファクタリングであれば現金化が可能となることが少なくありません。これにより、資金繰りに課題を抱えている企業でも事業を継続しやすくなり、回復の機会をつかむための橋渡しとなります。経営状況に左右されにくいというファクタリングの特徴は、多くの中小企業にとって心強い支援策となっています。

個人事業主でも利用できる

ファクタリングは法人だけでなく、一定の条件を満たせば個人事業主でも利用することができます。近年では、フリーランスや小規模な事業主の増加に伴い、個人事業主向けのファクタリングサービスを提供する業者も増えてきました。特に、取引先との掛け取引がある業種では、売掛金の早期資金化によって事業運営がより安定します。融資に比べて審査基準が緩やかで、資産や担保を求められることが少ない点も、個人事業主にとっては大きなメリットです。資金繰りに悩む場面でも迅速な対応が可能であるため、規模に関わらず多くの事業者にとって有効な資金調達の選択肢と言えるでしょう。

ファクタリングによる売掛金買取のデメリット

ファクタリングによる売掛金買取のデメリット

では逆にファクタリングによる売掛金買取にはどんなデメリットがあるのでしょうか。一つずつ紹介していきます。

手数料の設定が高め

ファクタリングには資金調達のスピードや信用審査の柔軟性といったメリットがありますが、その代償として手数料が高めに設定される点が大きなデメリットです。特に、2社間ファクタリングは売掛先の同意を必要としない分、ファクタリング会社にとって回収リスクが高くなるため、手数料率が3%〜20%程度と幅広く、場合によっては資金調達コストが割高になることがあります。短期間での利用であっても、繰り返し利用することで累積的なコストが増加するため、資金繰りに悩む企業にとっては慎重な検討が求められます。コストパフォーマンスを考慮したうえで、緊急性や必要資金額に応じて利用を判断する必要があります。

債権譲渡登記が必要になることもある

ファクタリングを利用する際には、債権の確実な譲渡を証明するために「債権譲渡登記」が必要となるケースがあります。これは、売掛金の権利が正式にファクタリング会社に移ったことを第三者に対して示すための法的手続きです。ただし、この登記が行われると、取引先など第三者にファクタリングの利用が知られる可能性があるため、企業の資金繰り状況を知られたくない場合にはデメリットとなることもあります。また、登記手続きに伴う費用や手間がかかる点も見逃せません。とくに中小企業にとっては、このような手続きが負担になる場合もあり、サービス選定の段階で登記の必要有無を確認することが重要です。

売掛金の範囲までしか資金調達はできない

ファクタリングは売掛金という実際に存在する債権を現金化する仕組みであるため、調達できる金額は売掛金の額を上限とする制約があります。そのため、必要な資金額が売掛金の範囲を超える場合、他の資金調達手段と併用しなければなりません。また、売掛金の内容や支払期日、売掛先の信用力によっては、希望通りの金額を調達できないこともあります。このように、ファクタリングは即効性がある一方で、調達可能額に限界があるという点を理解し、資金計画全体の中で適切に位置づけることが求められます。過度な依存を避け、長期的な経営戦略の中での利用を検討することが大切です。

さらなる資金繰りの悪化を招くこともある

ファクタリングは一時的な資金繰りの改善に役立つ反面、その利用が頻繁になると、売掛金を繰り返し前倒しで現金化することになり、将来的なキャッシュフローを圧迫する可能性があります。とくに、継続的に資金不足が発生している企業がファクタリングに依存し続けると、資金の先食い状態が常態化し、根本的な経営改善が進まないまま、慢性的な資金難に陥るリスクがあります。さらに、手数料による資金目減りや、売掛金が底をついた後の資金繰りが立ち行かなくなるケースも考えられます。したがって、ファクタリングはあくまで一時的な資金対策として位置づけ、経営改善や収益力の強化と並行して活用することが必要です。

ファクタリング会社の比較ポイント

ファクタリング会社の比較ポイント

では実際に利用するファクタリング会社はどのようなポイントで選べばよいのでしょうか。比較ポイントを紹介します。

契約したいファクタリング方式か

ファクタリングを検討する際、まず確認すべきなのは、その会社が自社に合ったファクタリング方式を提供しているかどうかです。ファクタリングには大きく分けて「2社間」と「3社間」の2つの方式があり、それぞれにメリット・デメリットが存在します。取引先に知られずに資金調達をしたい場合は2社間ファクタリングが適しており、コストを抑えて安定した取引を望むなら3社間ファクタリングが選ばれることが多いです。ファクタリング会社によってはどちらか一方のみの提供となっているケースもあるため、自社のニーズと一致するか事前に確認が必要です。また、最近では個人事業主向けやオンライン完結型など、ニーズに特化したサービスを展開する業者も増えており、選択肢の幅が広がっています。

希望の期日までに現金化できるか

資金調達の目的が「急な支払いに備える」など緊急性の高いものであれば、現金化までに要する時間は非常に重要な比較ポイントです。ファクタリング会社によっては、最短即日での入金が可能なところもあれば、数日から1週間以上かかる場合もあります。とくに2社間ファクタリングでは、売掛先の同意が不要な分スピーディーに進行する傾向があり、急ぎのケースに向いています。一方で、3社間ファクタリングは売掛先の同意を要するため、手続きに時間がかかることもあります。申込みから入金までのスケジュールを事前に明確にしてくれる会社を選ぶことで、資金計画にズレが生じるリスクを最小限に抑えることができます。

手数料が高すぎないか

ファクタリング会社を選定する際、手数料の水準も重要な判断材料となります。手数料はファクタリングの形式や取引のリスク、売掛先の信用力などによって異なりますが、一般的には2社間で5~20%、3社間で1~10%程度が相場です。ただし、表示されている手数料が一律ではなく、契約内容や追加の管理費用、事務手数料などが加算されることもあるため、総額での比較が求められます。また、極端に手数料が低い場合には、後から別費用が加算されたり、サービスの品質に問題があるケースもあるため注意が必要です。信頼性の高い企業かどうかを判断するためにも、複数社から見積もりを取り、内訳をしっかり確認することが大切です。

希望金額を買取可能な会社か

ファクタリングを利用するうえで、自社が必要とする金額を実際に調達できるかどうかは最も基本的な確認事項の一つです。ファクタリング会社によって、取り扱う買取金額の下限・上限が異なり、少額に特化した会社や、逆に1,000万円以上の高額案件に対応可能な企業も存在します。必要な資金が少額であっても、最低取引額に満たなければ断られることがあるため、自社の資金調達ニーズと合致する取引枠を設けているかを確認しましょう。また、買取金額は売掛金の額面すべてではなく、一定の審査結果に基づいた金額となるため、提示された買取額が希望に届かない可能性もあります。事前相談やシミュレーションを活用して、具体的な調達可能額を確認しておくと安心です。

償還請求権はあるか

ファクタリング契約において「償還請求権」の有無も、比較の際に注目すべきポイントです。償還請求権とは、万が一売掛先が支払いをしなかった場合に、売掛債権を売却した企業がその責任を負うかどうかを示すものです。償還請求権が「ある」契約では、債権回収ができなかった際に、売掛債権を売却した企業が買戻しや代金の返還を求められるリスクがあり、実質的には融資に近い性質を持ちます。一方で、償還請求権が「ない」契約(ノンリコース)は、債権の回収リスクをファクタリング会社が負うため、利用企業にとってリスクが軽減されます。ただし、ノンリコース型の契約はリスクが高いため、手数料が高くなる傾向があります。自社のリスク許容度やキャッシュフロー計画に応じて、どちらの契約形態が適しているかを見極めることが大切です。

まとめ

ファクタリングは、売掛金を早期に現金化することで、企業の資金繰りを支える有効な手段です。
借入とは異なり新たな負債を生まないため、財務体質を悪化させずに資金調達が可能です。特に急な支払いが必要な場面や、銀行融資が難しい状況において、迅速で柔軟な対応ができる点が評価されています。
一方で、手数料の高さや契約方式によっては取引先に知られるリスク、資金化できる金額の上限など、慎重に検討すべき点も存在します。
だからこそ、自社にとって最適なファクタリング会社を選ぶためには、契約方式・手数料・入金スピード・買取可能金額・償還請求権の有無など、多角的な視点で比較することが重要です。
資金繰りの改善だけにとどまらず、事業の成長を後押しするための選択肢として、ファクタリングの活用を前向きに検討してみましょう。

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