時速70kmを超えるスピードでバンクを駆け抜ける競輪選手。その驚異的なパワーの源泉であり、一目で彼らがアスリートであるとわかる象徴的な身体的特徴が、丸太のように太く鍛え上げられた「太もも」です。テレビや競輪場でレースを観戦した際、その規格外の太さに驚いた経験がある方も多いのではないでしょうか。
一体なぜ、競輪選手の太ももはあそこまで太くなるのでしょうか。また、その太さは強さに直結するのでしょうか。この記事では、競輪選手の太ももの平均的な太さから、その太さが必要とされる理由、そしてあの驚異的な脚力を生み出すための具体的なトレーニング方法まで、詳しく解説していきます。競輪選手の肉体の秘密を知れば、レース観戦がより一層楽しくなるはずです。
競輪選手の太ももの太さは平均何センチ?

競輪選手の太ももと聞くと、非常に太いイメージがありますが、実際にはどのくらいの太さなのでしょうか。一般人とはかけ離れたそのサイズは、日々の過酷なトレーニングの賜物です。ここでは、男女別の平均的なサイズを見ていきましょう。
男性競輪選手の太ももの太さは?
成人男性の太ももの太さの平均が50cm前後であるのに対し、男性競輪選手の太ももは、平均して60cm以上あると言われています。これは、多くの女性のウエストサイズに匹敵するほどの太さです。もちろん、これはあくまで平均値であり、トップクラスの選手や、特にパワーを武器とする選手の中には、太もも周りが70cmを超える選手も珍しくありません。過去には80cmを超えていたという伝説的な選手もいたほどです。この太さは、単に脂肪がついているわけではなく、高強度のトレーニングによって極限まで鍛え上げられた筋肉の塊です。この強靭な筋肉が、レースにおける爆発的なダッシュ力や、風の抵抗を受けながら高速を維持するためのパワーを生み出しているのです。
女性競輪選手の太ももの太さは?
2012年にスタートした女子競輪「ガールズケイリン」で活躍する女性選手たちも、男子選手に負けず劣らず立派な太ももを持っています。成人女性の平均的な太もも周りが50cm前後であるのに対し、ガールズケイリン選手の平均は60cm前後に達すると言われています。中には65cmを超える選手もおり、その太さは男子選手に匹敵します。ガールズケイリンは男子競輪のようなライン戦がなく、個々の選手の脚力がよりストレートにレース結果に結びつくため、パワーの源泉となる太ももの筋肉は非常に重要です。美しさと力強さを兼ね備えた彼女たちの鍛え上げられた脚は、ガールズケイリンの大きな魅力の一つとなっています。
競輪選手の太ももはなぜ太いのか?太ももの太さと強さの関係は?

あの驚異的な太ももは、競輪という競技の特性に特化して鍛え上げられた結果です。空気抵抗との戦いである自転車競技において、なぜそれほどの筋量が必要なのか、そしてその太さが直接的な強さに繋がるのかを解説します。
競輪選手に求められるのは、スタート時の爆発的なダッシュ力、ライバルと競り合う際のパワー、そしてゴール前のスパートで最高速度に達するための瞬発力です。これらの力を生み出すためには、太ももの前側にある「大腿四頭筋」、裏側にある「ハムストリングス」、そしてお尻の「大臀筋」といった、下半身の大きな筋肉を極限まで発達させる必要があります。重いギアを踏み込み、高速でペダルを回転させるという動作を繰り返すことで、これらの筋肉が肥大し、あの驚異的な太さが作り上げられるのです。
では、太ければ太いほど強いのかというと、一概にそうとは言えません。もちろん、筋肉量が多いことはパワーの源泉として有利に働きます。しかし、重要なのは筋肉の「質」であり、瞬発力を生む「速筋」と持久力を支える「遅筋」のバランス、そしてその筋肉を効率的に使うためのペダリング技術です。また、過度な筋肉は重りとなり、持久力の面で不利になることもあります。トップ選手たちは、太さだけでなく、柔軟性や持久力も兼ね備えた、競技に最適な「使える筋肉」を追求しているのです。
太もも・足(脚)を太くする競輪選手のトレーニング方法をご紹介!

競輪選手は、あの驚異的な脚力を手に入れるため、自転車に乗り込む実走トレーニングと、筋力を直接的に鍛えるウェイトトレーニングを組み合わせて、日々過酷なトレーニングを行っています。ここでは、その代表的なトレーニング方法をいくつかご紹介します。
乗り込みの効果的な方法とは?
「乗り込み」とは、自転車を使った実走トレーニングの総称です。これは競輪選手のトレーニングの基本であり、最も多くの時間が割かれます。主な目的は、心肺機能や筋持久力の向上、そしてペダリング技術の洗練です。街道と呼ばれる一般公道での長距離走行や、バンク(競輪場の走路)での周回練習を、多い日には100km以上行うこともあります。 また、単に長く走るだけでなく、レース本番を想定した高強度のトレーニングも欠かせません。ゴール前のスパートを想定して全力でダッシュする「もがき」練習は、最高速度と瞬発力を高めるために繰り返し行われます。この乗り込みと、後述するウェイトトレーニングを組み合わせることで、競輪選手特有の太く強靭な脚が作られていくのです。
スクワットの効果的なやり方とは?
競輪選手の脚力と太ももの太さを生み出すウェイトトレーニングの王道が「スクワット」です。スクワットは、太もも前側の大腿四頭筋、裏側のハムストリングス、お尻の大臀筋といった、ペダリングで使われる主要な筋肉を一度に効率よく鍛えることができます。競輪選手は、自身の体重をはるかに超える重量のバーベルを担ぎ、高重量・低回数のトレーニングを行うことで、筋力の最大値を高め、筋肉を肥大させます。重要なのは、腰や膝を痛めない正しいフォームで行うことです。背中を丸めず、膝がつま先より前に出すぎないように注意し、お尻を深く下ろすフルスクワットが基本となります。この地道で過酷なトレーニングが、驚異的なパワーの土台となっているのです。
デッドリフトの正しいフォームとは?
「デッドリフト」も、多くの競輪選手が取り入れている重要なウェイトトレーニングの一つです。床に置いたバーベルを、背中をまっすぐに保ったまま持ち上げるこの種目は、太もも裏のハムストリングス、お尻の大臀筋、そして背中全体の筋肉(脊柱起立筋群)を強力に鍛えることができます。競輪におけるペダリングは、踏み込む力だけでなく、ペダルを引き上げる力も重要です。デッドリフトで鍛えられる身体の裏側の筋肉群は、この引き足のパワーや、高速でペダリングする際の体幹の安定性に大きく貢献します。スクワットと同様に、腰を痛めやすい種目でもあるため、正しいフォームを習得し、無理のない重量から始めることが不可欠です。
レッグプレスの効果的な使い方とは?
「レッグプレス」は、専用のマシンに座り、足を乗せたプレートを押し出すことで、下半身の筋肉を鍛えるトレーニングです。スクワットと同様に大腿四頭筋や大臀筋をターゲットにしますが、マシンが体の動きを安定させてくれるため、フリーウェイトのスクワットよりも腰への負担が少なく、より高重量を扱いやすいというメリットがあります。そのため、純粋に脚の筋力を向上させたい場合や、特定の筋肉を集中して鍛えたい場合に非常に有効です。競輪選手は、このレッグプレスを用いて、数百kgという常人では考えられないほどの重量を扱い、ペダルを踏み込むための爆発的な筋力を養っています。これもまた、あの太ももを作り上げるための重要なトレーニングの一つです。
まとめ
競輪選手の丸太のように太い太ももは、彼らがプロのアスリートであることの何よりの証です。その太さは、平均で60cmを超え、トップ選手では70cm以上にも達します。これは、時速70kmを超えるスピードを生み出し、激しいレース展開の中で勝利を掴むために、日々の過酷なトレーニングによって鍛え上げられた筋肉の塊に他なりません。 自転車に長時間乗り込む「乗り込み」練習で持久力と技術を磨き、スクワットやデッドリフトといった高強度のウェイトトレーニングで爆発的なパワーを養う。こうした努力の積み重ねが、あの驚異的な脚力を生み出しています。 単に「太い」というだけでなく、その裏にある選手の努力や科学的なトレーニングに思いを馳せながらレースを観戦すると、競輪の駆け引きがより一層深く、面白く感じられることでしょう。